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マイナビABCチャンピオンシップゴルフトーナメント 2019
釣果なし、のち船酔い。50歳の藤田寛之が最終日を前に切実なV争いを吐露
声も上ずって聞こえた。
「…入っちゃいました!!」。
藤田寛之が、最後18番でイーグル締め。
225ヤードから、5Wで6メートルに2オン。左奥からのスライスラインの狙いどころは「2カップくらいかな、と思ったのですが。キャディのピーターがもうちょい、と言ったのでもう少し読んで、そしたら真ん中から入りました」。
首位と3差の通算12アンダーは、4位タイでクラブハウス前で開かれたファンサービスの公開インタビューに呼ばれた。
ひしめくファンの前でも饒舌に、その攻略を語った。
前日2日目はこの18番で、2打目を池に入れたが、浅瀬から打つ”ウォーターショット”を披露。見事に寄せて”池ポチャバーディ”で、ギャラリーを喜ばせたが「イーブンの初日はフックばっかり出た。ヨレヨレしながらやっていた」。
今年6月の誕生日でシニア入りの年齢に到達。
「この歳になると、すごい悩みが多い。自分はここで、ずっと歯が立つようなゴルフがしたいが、自分のパフォーマンスというよりかは、周りの若い成長とかパワー。2020年代の新しいマシンが出るころに、まだ90年代のマシンが頑張っている。そう想像すればわかるでしょ?」。
苦しさを、分かってくれと言わんばかりに、「そのマシンを長持ちさせているのは自分。いろんなことを考えながら、大変なメンテナンスを頑張っている」。
珍しく早口の受け答えには、悲痛な訴えもこぼれた。
この日は、こちらも47歳のベテラン、弟弟子の宮本勝昌と同組。
宮本が、1番から連続バーディのスタートダッシュに「ついていかなきゃ。うかうかしていられない」と、良い指針となったが結局10位に沈んだ宮本と、最終日は組が離れて「どうしよう…? 明日も、こんな感じで回れればいいのかな…。よくわからない。若いころは色々考えましたけど、この歳になると、考えても一緒。どうでもよくなる。いつも通りっすね。ここ置こうと思っても、置けなかったら終わりだし…」などと、いつもは理路整然と話す選手が、こんなに支離滅裂になるのも珍しい。
先週の「ZOZOチャンピオンシップ」は、上位3人に出場権利のある先月のブリヂストンオープンで、4人タイの2位につけたが、世界ランクで上位の若手2人に譲った。
日本初開催の米ツアーに出られなかったかわりに、6月に取得した二級の小型船舶免許でクルーザーを操り仲間を連れて、一泊二日の航海に出るつもりが、それも悪天候でキャンセル。
仕方なく、ウッズの偉業をテレビで見たが「ただ楽しんで、見てただけ。刺激はロープ内でもらえるのがホンモノ。画面から見えるのは、大した刺激じゃないでしょう」。出られなかった悔しさが、募るばかりだった。
気持ちを晴らそうと、天候が回復した週末に改めて出航し、朝釣りに出たが「何も釣れなくて、また船酔いをしてしまった。あっちもこっちも情けない」と、トホホな50歳。
「明日も伸ばしあいになるのは間違いない。日本も凄いレベルが上って、またいい勝負が見られるんじゃないか。自分もそこに入りたいけど前半で、ポツンと寂しい思いはしたくない」。
5年ぶりのツアー通算19勝かかる最終日は、切実なV争いになりそうだ。