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20年のメルセデス男。大槻智春が狙う21年のバージョンアップ
総合評価の「メルセデス・ベンツトータルポイントランキング」で1位に浮上した、プロ11年目の大槻智春。
JGTOのホームページには、主要スタッツのベスト5をダイジェストで紹介する欄があり、1位者は顔写真付きで表示される。
今年の最終戦が終わると同時に、大槻のスマイル写真がトップを飾ると、たちまちスマホが大賑わいだ。
「ベンツ、もらえるの?」「やったね!」
同賞のシーズン1位の副賞が、メルセデス・ベンツのSクラス(2019年実績)と知る友人らから、気の早いお祝いメッセージが次々と届いて「いや、まだ6試合しか…」と、苦笑い。
コロナ禍で、開催6試合にとどまった今年。21年とのシーズン統合が決まって、賞金王も、各部門別ランキングの1位決定も来年に持ち越された。
JGTOのホームページも、大槻のポップ写真で年を越すことになった。
「このまま、来年末までトップにい続けることができたら嬉しい」と、自身への期待も込めて返信した。
飛んで曲がらない高精度のショットを武器に、今年の開催6試合のうち4試合でトップ10入りを果たした。
賞金ランキングは目下8位でひとまず終えた。
そのほかの部門別では1位のイーグル率など、主要7部門でトップ10を維持した。
だが、昨年の関西オープンに次ぐ2勝目には一歩及ばなかった。
特に、最後の2試合は惜しかった。
11月の「ダンロップフェニックス」に続いて今年の最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」でも、1差の惜敗。
首位と4打差から出た最終日は6番で、7メートルを沈めて今年8つ目のイーグルを記録。
8番ではバンカーから直接入れる連続バーディも奪った。
後半14番でついに首位に追いついたが、17番パー5で混戦から抜け出す最後の大チャンスは生かせなかった。
5Iで打った190ヤードの2打目は、いちどピンそばに寄った。しかし、ボールは傾斜を転がりカップから遠ざかってしまった。
12メートルのイーグルパットは寄り切らず、2メートルのバーディパットも逃した。
3パットのパーで、逆転の好機を取り損ねて4人タイのまま、もつれ込んだ勝負の18番は、最難関のパー3で第1打をグリーンの右ラフに落とした。
ピン3メートルに乗せたがこのパーパットを外した。
通算7アンダーで、ひとつ後退して上がった。
「その時点で、僕のすぐ後ろのチャン・キムと、最終組の谷原さん、岩田さんが8アンダー。僕の優勝は、もう厳しいかな…」。
プレー後の見立ては外れてくれなかった。
「残念」と労いの言葉に加え、泣き顔の絵文字つきで、すぐにラインメッセージを届けてくれた、尊敬するベテランの谷口徹。
昨オフから加えてもらった恒例の宮崎合宿も、このオフはコロナ禍でどうなるか。
感染者もまた増え始めており、例年どおりの調整もできるかどうか。
好調を維持しながら、再び自粛傾向のオフに突入するのは惜しいが「パットのフィーリングは今年、決して良くはなかった。春まで調整できる期間ととらえて今、自分が出来ることを頑張ります」と、すでに来年を見据えて年越しも練習に励む。
「勝てなかったですが、今年これだけ試合数が少なくなってもモチベーションを下げず、開催していただいた試合で常に上位で戦えたのは評価できる」と、前を向く。
「来年こそ勝って、いま乗っているベンツもバージョンアップできたら最高ですね」。
せっかくかぶったメルセデスの冠は、年が明けても譲らない。