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東建ホームメイトカップ 2021
震災5年。アトムの祈り
早朝から雨に降られた前半のアウトコースは苦しんだ。
「ショットがパラパラで、パーオンも3つしかできていない」。
それでも、1番から2.5メートルのパーパットを拾うなど、「シブいのを入れてなんとか耐えた」。
第1打をベアグランドに落とした3番(パー3)でボギーが先行したが、8番で2.5メートルを入れ返すと、後半3つのバーディで上昇。スコアを伸ばすと自然と気持ちも高ぶった。
「本当はここに来るまで、行きたくない、と思っていたんです」。
コロナ禍にまみれた昨年は、6試合の開催にとどまり、そこからまた3か月のオフ。
「試合をしない期間があまりに長すぎて…」。
難病指定の持病持ちだ。
「コロナの心配もあるし、体もあちこち痛いし。もう、ゴルフはいいかな…って。ちょっと心が病んでいた。気持ちが乗らなかったんです」。
悶々とした会場入りだったが「ここに来たら、ガラリと変わった」。
震災から2年の18年大会を制した。
「初優勝したこの場所に戻ってきたら、自信も戻ってきて、嫌だとか、そんなこと言ってらんない。応援してくれる人たちのためにも精一杯、頑張ることが大事なんだ、と」。
気持を入れ替え開幕の日を迎えた。
昨年は、開催中止になったが「この大会に来ると、いつも余計に思い出す」。
大地震の一報は、16年大会の開幕前夜。
プレー中も家族を案じて泣きそうだった。
あれから5年。
「だんだん、忘れられていくんでしょうけど、僕ら熊本の人間は、絶対に忘れちゃいけない」。
開幕前に上げたインスタには「♯熊本♯復興」。
ハッシュタグにも祈りを込めた。
今年、シンボルの熊本城が天守の復興工事を終えた。
一般公開を、間もなく控えて思い出すのは妻の和歌子さんと初めてのぼった時のこと。
「それが、ちょうど震災の2年前だったんですけど、なんかすごく感動して…。だから、崩れた石垣を見上げるたびに、もっとのぼっておけばよかったと、後悔していた。今度は、子どもたちと一緒にのぼれる日がすごく楽しみ」。
震災後は幼なじみの永野竜太郎らと、先輩後輩プロたちを熊本に招いて、幾度か復興イベントを開催してきた。
「またやりたいのはやまやまだけど。こんな状況でやっていいのか、どうなのか。迷っているけど気持ちはある」と、早期の収束への祈りも強くなる。
「とにかく、何かしら頑張っている姿を見せていけたらいい」。
5年の節目に改めて誓った。