プロ4年目の植竹勇太は、スピードスケートの高木美帆さんと同じ、北海道の幕別町（まくべつまち）出身。

「体力的にも精神的にも相当なものがあったと思いますが、すべてのレースで結果を出したのは、ただただ、凄いのひとことです」と、北京五輪で日本選手団の主将として大会5種目に出場し、4つのメダルに輝いた偉業をたたえ、「美帆ちゃんは幕別町の誇りです。おめでとうの気持ちと共に、本当にお疲れ様でしたと伝えたい」と、祝辞を送った。

1学年上の高木さんとは、小学生時代に同町のサッカー少年団「札内（さつない）北FC」で一緒だった。

五輪の開幕直前に、当時の監督から連絡が来た。

お姉さんの菜那さんと出場する団体追い抜きの決勝戦時（15日）に、町有志のオンラインによるパブリックビューイングで流すという、応援メッセージの依頼だった。

高木さんとは、小学校を卒業後は一度も会っていない。

「僕のこと覚えてくれてるのかなあ…って、ちょっと思いましたけど。かつてのチームメイトとして、僕は今でも凄く刺激を受けていることを伝えて、ぜひメダルを獲ってください､と」。

レース当日は大学同期の比嘉一貴らと沖縄合宿の真っ最中で、“zoom観戦”には参加できなかったが動画を通じてエールを届けられたのは、嬉しかった。

植竹も、スピードスケートの少年団に掛け持ち所属していた時期があるが、小5で断念している。

「かかと部分がパカパカって離れる専用シューズがあるんですけど、サイズが21.5センチからしかなかったんです。上の大会に行くほどみんな履いていて、それで滑ると全然タイムが変わるんですけど、僕は足がまだちっちゃくて。履きたくても履けないから全然面白くなくなって。サイズが合う前にやめちゃいました」と、高木さんと氷上で競う機会はなかったが、「めちゃくちゃ足が速くて、全然追いつけなかったのは、覚えています」と、サッカー部で今の片鱗は見ていた。

当時から努力も違ったことを思い出す。

「僕は車で送り迎えしてもらうんですけど、美帆ちゃんはいつも走って練習場所に来ていました。母親が『美帆ちゃんは走ってるよ』って言うんですけど、僕は『雪降ってるから』とか言い訳とかして。全然、真似できなかった」と、快挙に合わせて記憶を手繰る。

「競技に対する意識も凄く高くて、サッカーも全力で頑張っていた。あの頃からすでに大きな目標を持って取り組んでいたのだと思います」と、今なら容易に想像がつくほど、当時から真剣みに溢れていた。

植竹のご両親は、前回の平昌五輪後に町内で行われた高木さん姉妹の凱旋パレードを見に行かれたそうだ。

「僕はちょうど大学（宮城県・東北福祉大）を卒業して、プロデビューを控えた年だったのですが、両親から『美帆ちゃんに負けないで頑張れ』と」。

連覇がかかった今回の団体追い抜きでは2位に敗れて、お姉さんの菜那さんと悔し涙を流していたが、その2日後（17日）にはご自身の今大会最終レース（1000メートル）でとうとう、個人初の金メダルをつかんだ高木さん。

昨季の賞金ランキングで38位に入り、初のシード選手としてジャパンゴルフツアーの開幕を控える今季、植竹は再び五輪の偉業に励まされている。

昨年10月の「ISPS HANDA ガツーンと飛ばせ ツアートーナメント」では、最終日を5打差の大量リードで出ながら同学年の池村寛世に大逆転負け。2位に終わった。

共に最終組で回った大学先輩の谷原秀人の労いで、なんとか堪えることができたが、植竹も泣きたいほど悔しい思いを味わっており、最速の金メダルを契機に新シーズンに賭ける思いも急加速。

「励みになる、なんてもんじゃないです。今年こそ、僕もぜったい勝ちたいです」。

リベンジを期す今オフは、急ピッチで飛距離アップを模索中。
今は競技が違っても、これからも全速で「美帆ちゃん」の背中を追う。

• 植竹 勇太
• 比嘉 一貴
• 池村 寛世