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Sansan KBCオーガスタゴルフトーナメント 2022

2代目怪物ルーキー。河本力はAKIRAメナかった

ルーキーの河本力(かわもと・りき)は、最後までAKIRAメナかった。
大会最年少の22歳で決めたプロ7戦目のツアー初優勝を、並んで入った最終ホールのバーディパットで決着。

ガッツポーズを作って上がると、日体大同期で石川遼の弟・航(わたる)が待っていた。


「ナイストライ。おめでとう」と肩を抱かれたが、感泣で覚えていない。

「吐くほどのトレーニングを一緒にやったり、ゴルフ界で親友と呼べるのは航か杉原大河くらい。一緒に喜んでくれて本当に嬉しかった」と、涙が止まらなかった。


「最終日最終組は初めて。こんなに苦しい戦いとは知らなかった」と、声を震わせ「今日会場で応援してくださった方、今までサポートしてくださった方々には感謝してもしたりない」と涙をぬぐった。




国内男女ツアーで史上5組目のきょうだい優勝(※)も達成させた。
このオフも「サボんな」「そんなんでええんか」と言い合い、「刺激し合った」という姉の結さんの1勝に、プロ1年目で追いついた。

奇しくも、最終日の翌29日が結さんの24歳の誕生日。
「良い誕生日になったかな、と思います」と、涙ながらに報告した。


最終日を1差の2位で出て、4番、5番で連続ボギー。
「前の僕なら確実に焦って大崩れをするところ」。
でも、次の6番パー5で、アゲンストの第1打を350ヤードも飛ばして軽々バーディ。首位に並んだ。


前半最後の9番パー5で逆転に成功し、一時は4差をつけたが、16番で長いバーディパットを沈めた李尚熹(イ・サンヒ)に再び並ばれた。

「焦って、凄いシビれたけど18番でティショットに成功したら獲れる,と信じて自分に集中することだけを意識してできました」。
最後のパー5で2打目はミスして右ラフに入れたが、3打目はピンに向かってまっすぐ打てた。
「結果ヒーヒー言ったバーディでしたけど。そこはちゃんと怖がらずに腹筋締めて頑張りました」。
震える手で、土壇場の1打を沈めた。


平均323.75ヤードを記録し、2位を20ヤード超も離す現在飛距離1位のルーツは地元愛媛の松山聖陵高時代。

「体重30キロ増量し、野球部のオフトレに参加させてもらって可動域とか広げたら、飛距離が手に入ってました」と豪打を武器に、アマ時代からプロの試合で活躍したが、その分だけ大崩れも多かった。


苦汁をのむたびに周囲に言われた。
「飛ぶとちやほやされて、勘違いしているけどゴルフは飛距離じゃないから」。


本当の意味を知ったのは、最近だ。


「飛距離が凄いと思われているからドライバーを持つ、というのは矢印が外を向いている状態。回りの目を気にして飛ばしてやろうとか、出来ないことを出来ると勘違いするから自滅する。じゃなくて、自分に矢印を向けたら、どうやって攻めれば安全か、いま自分の調子はどうなのか。見えてくるものがいっぱいある。矢印が外に向くか、内に向くかで僕は変わった」。

幾度か優勝争いを重ねて悟った。
「一番大事なのは心。考え方ひとつで変わる」。


最終日を共に1差の4位で出ながら「78」を叩き、大学後輩の中島啓太さんにアマVを譲った昨年9月の「パナソニックオープン」は、今も奥歯を噛むほど悔しいが、悔恨から学ぶことをやめず、自分の弱さと向き合い続けて栄冠をつかんだ。


ゴルフ×音楽がテーマの今大会で、スタートの入場曲に選んだのはOZworldさんの「AKIRAメナイ」。

タイトルを地で行く感動の初Vで芥屋の夏フェスを締めくくった。


将来の目標は、海外ツアーへの挑戦だ。
同じ愛媛の英雄に松山英樹がいる。
「何も言わせない強さ。日本人でもやれることを証明してくれている。ああいう選手になりたい」。
松山も、新人時代にこう呼ばれた。
「怪物ルーキー」。
2代目として後を追う。


追いかけよう



<過去の男女ツアーでのきょうだい優勝>
・中嶋常幸(48勝)と妹のエリカ(4勝)
・クリス・キャンベル(1勝)と妹ニッキー(1勝)
・宮里聖志(1勝)と弟の優作(7勝)と妹の藍(日米欧通算24勝、国内15勝)
・香妻琴乃(1勝)と弟・陣一朗(2勝)

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