昨季は特に、プロを夢見るアマの連鎖が続いた1年だった。
東北福祉大4年の蟬川泰果(せみかわ・たいが、現在プロ)が6月の「ジャパンクリエイトチャレンジ in 福岡雷山」で、片山晋呉(1990年)、小平智(2010年)、杉原大河(2019年)、河本力(2021年)に続く史上5人目のアマVを飾ると、すぐ7月の「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP CHALLENGE in FUKUI」で、福井工業大学2年の髙宮千聖(たかみや・ちさと、現在プロ)が史上6人目を達成。
さらには、9月の「ダンロップフェニックストーナメントチャレンジinふくしま」で近畿大学2年の@山下勝将(やました・まさゆき)さんが続くなど、年間3人ものアマ勝者が誕生。
ABEMAツアーを席巻した。
特に蟬川は、その後レギュラーツアーで「パナソニックオープン」と、5年シードのタイトル戦「日本オープン」で史上初のアマ2勝を達成。
「僕の人生を変えてくれた試合」と語るなど、ABEMAツアーはすでにアマにも登竜門となっている。
一方で、今年は復活に賭けるベテラン・中堅も黙ってはいかなかった。
若手の躍進を押しのけABEMA賞金王に就いた大堀裕次郎(おおほり・ゆうじろう)は31歳。
石川遼や松山英樹と同学年で、木下稜介とは大阪学院の大学同期である。
初シードは木下より早かったが右足首のねんざと1Wの不振が重なり、3年目の19年に陥落していた。
復活に邁進するはずだった翌2020年は、コロナ禍ともろに重なった。
開催中止が相次ぐ波乱下で、大堀がひょんなことから意気投合したのが、2つ先輩の小平である。
米ツアーで小平のキャディを体験したり、一緒に合宿したりと時間を共にし、小平の人柄を知れば知るほど、小平への尊敬や信頼が爆上がり。
「ゴルフに対する姿勢は誰より凄い」と、その取り組みや強靱なメンタルはもちろん、大堀が何より感化したのが小平の男気だった。
「頑張れ頑張れといつも励ましてくれて、気に懸けてくれる。コロナで大変な時期も折れないで頑張ることができた」と、感謝する。
ABEMAツアーも賞金レースが大詰めを迎えた今年9月にレギュラー参戦した日亜韓共催「Shinhan Donghae Open」で、岩田寛(いわた・ひろし)にパッティングを教えてもらう機会を得られたのも、小平による縁結びがあったから。
「それで僕も話せるようになりました。ヒロシさんはこうしたら入るという理論を確立している。今年はずっとショットが良くて、パットさえ入れば優勝できると感じていたときに、ヒロシさんが僕に見合った理論を教えてくれた。ヒロシさんにパターを教えてもらってすぐ勝てた」と、言ったとおりに直後のABEMAツアー「PGM Challenge」で今季1勝(通算2勝目)を飾ると、10月のシーズン最終戦「ディライトワークス JGTO ファイナル」で一気に2勝目。
逆転の初賞金王で、みごとレギュラーツアーの年間シードを復活させたのだった。
今月5日の部門別表彰「ジャパンゴルフツアー表彰式」に合わせて上京した大堀は、前日4日のシーズン最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の最終ラウンドを観戦。
V争いの小平や岩田をロープ際から応援し、「自分も来年は出場選手として…」との思いを熱くし、翌日の受賞登壇では「来シーズンは優勝することしか考えていない」と、スピーチをした。
「ABEMAツアーの賞金ランキングトップ20から、30位くらいまでの選手のレベルは、レギュラーツアーの選手と僅差」との確信はある。
「でも、名前負けじゃないですけど、優勝してるかしてないかとか、レギュラー選手との違いはメンタル的な部分」と、理解する。
「プレッシャーがかかったときの気持ちの持ち方や戦い方、コースマネジメントなど。こうなったときに、自分はこうしたらいいなとか、強い選手は自分をよく知っているけど、それを人から教えてもらうのには限界がある」とも。
今年は先輩プロからの励ましや、アドバイスを結実させることができたがここから先は、自分自身で答えを模索していく。
「やっとABEMAツアーでそういうのがつかめてきましたけど、僕もまだまだ発展途上。来年こそレギュラーでも結果が出せたらいいな、と思っています」(大堀)。
プロ2季の今季、欧州ツアーに軸足を移した久常涼(ひさつね・りょう、20ー21年)やレギュラー2勝の大槻智春(2017年)、また2018、19年レギュラー賞金王の今平周吾(2014年)もABEMAツアーの歴代キング。
未来のテレビ「ABEMA」が冠についた2018年に掲げられたキャッチフレーズは「ABEMAから世界へ!」。
のし上がるチャンスは誰にもある。平等につかめる環境が、そこにはある。