6季連続でシードを続ける欧州・DPワールドツアーで史上初の日本共催が決まった昨年大会を契機に、本戦が近づくたび選手たちからいろいろ質問されるようになった。
その土地の特徴など丁寧に答える中で、特に今年に関して力説したのはなんといってもコースとからめた霊峰の美しさだ。
「一番のアピールポイントにしたのに今のところまだ、一度も見れていない」と、週明けからずっと雲に覆われたままの富士山方向をにらむ。
「明日あさってとぜひ天気がよくなって、富士山が出てくれると海外の選手もよりああ良いコースだなと言ってくれると思うんですけど・・・」。
欧州と日本をつなぐ“親善大使”として、祈る思いで開幕の瞬間を待ちわびる。
太平洋クラブ御殿場コースは、11月の日本ツアー「三井住友VISA太平洋マスターズ」の開催コースとしておなじみだが、川村は2018年の11月に欧州ツアーの最終予選会をクリア。
そこから転戦を始めたから、御殿場をラウンドするのは実に7年ぶりとなる。
もともと、定評の高いコースはその後、改良が加えられ洗練度は倍増した。
パー5がパー4に変更された6番など、噂では聞いていたが「改造後のコースは回れていなかったので。どうなのかな・・・と思っていたのですが、実際にプレーしてみて、なるほどと。他にも何ホールかバンカー位置が変わったり、縁取りが今風になったり。もともと凄く良いコースですけど、見え方が変わってさらに面白くなっている」と、本戦での攻略にも腕が鳴る。
今年、1年ぶりの日本ツアーで川村がいちばん楽しみにして来たひとつは、昔なじみとの練習ラウンドだった。
23日火曜日は谷口徹(たにぐち・とおる)と永野竜太郎(ながの・りゅうたろう)と、小木曽喬(おぎそ・たかし)と4人で回り、まず谷口に脱帽した。
「56歳ですよね? なのにとにかく元気で圧倒された。自分が谷口さんの年齢になったときに、自分とひと回り以上も若い選手とあれだけ元気にゴルフができるか。僕より練習ラウンドの仕方が若々しくて、本当にゴルフが好きなんだな、と。勝手に感動してました」と、惚れ惚れする。
「いつも僕の成績や、体のことを気にかけて連絡をくれる優しい先輩。僕もあんな風に年を取りたいな、と」。
永野とは、別会場だったが共に昨年、米ツアーの予選会に臨み「最終ステージで会おう」と、約束して以来の再会だった。
「2人ともセカンドでダメでしたけど、いつも仲良くさせてもらっている人と同じ舞台に挑戦できたのが嬉しかったですし、お互いに刺激を受け合う存在」と、今週は久しぶりの共闘に胸が鳴る。
そして、小木曽は福井工業大付属中学⇒高校でそれぞれ3年時に寮の同部屋で過ごした後輩だ。
かねてより「川村さんに憧れてプロになった」と話す小木曽がついに、初シード入りを果たしたのは昨季。
しかも、シーズン通して予選落ちゼロという記録付きの報告は先輩として本当に嬉しかったし、月日の流れを感じないではいられなかった。
もうすぐ31歳で、高校3年時に転向したからプロ13年目。
欧州ツアーも一気に若い選手が増えて「なんだか、急に長老みたいになってきました」と笑う。
昨年の久常涼に続いて、今年は星野陸也⇒中島啓太と、次々と初制覇を達成する若者たちを、頼もしく見ている。
「JGTOからルートが出来て、日本でもともと上手い子たちがそれを活用して出て来て、活躍するのはすごくいいこと」。
川村も幾度か初Vのチャンスがありながら、まだモノにできていないが、「それぞれタイミングがありますから、あまり気にしていない」と、どんな状況でも笑顔で我が道を歩けるのが川村の強さだ。
「長く続けて来られているのでそういうのを大切にしながら。変わらず自分のタイミングを待つという感じ」。
昨季は手首のケガがありながら、賞金シードを確保した。
さまざまな経験を重ねてきたからこそ、長く一線に留まり続けることの難しさとその価値を身をもって知っている。
欧州共催は、日本で唯一のプレー機会も昨年は予選落ちを喫して、土日に地元の三重県からわざわざ来てくださる予定だった知人をそれはそれはがっかりさせてしまった。
普段なら数あるトーナメントの中のひとつと、それほど気負いはないが、本大会に限っては「年に1回しかない。渾身の1試合になってしまうので・・・」と、年1のホーム開催にはいつもとはまた違ったプレッシャーがあるのは確か。
「両親も見に来てくれますし、いいゴルフができれば。今年は4日間いられるよう、自分も祈ってます」と改めて、富士に向かって微笑んだ。