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桑原克典、恩師と再会
「桑原プロが小学生だったとき、好きな先生はいましたか?」。
好きなどころか、桑原には忘れられない先生がいた。
3年生の担任だった、武馬(ぶま)範夫先生だ。
思い出の中の武馬先生は、「今でも強烈なインパクト」。
どこまでも型破りな先生だった。社会科が専門の先生だったが、スポーツや体育の時間に特に力を入れるところも好ましかった。
父親の指導で始めたゴルフだけでなく、バスケットや体操など、他の分野でも高い運動能力を発揮する桑原少年を、武馬先生はとても可愛がってくれた。
厳しい指導ぶりには怖がる生徒も多かったが、そんな武馬先生は桑原にとって「ヒーローだった」という。
「もし、プロゴルファーになっていなかったら武馬先生みたいな先生になりたかったんです」と、桑原は言っていた。
その話を聞いていた吉田文明校長は翌日19日には、スナッグゴルフ講習会の講師として再訪する“卒業生”のために、とっておきのプレゼントを用意して下さった。
その日の夕方、武馬先生に連絡を取って、桑原に会いに来て下さるよう頼まれたのだ。
詳しい事情は神谷幸男・教頭から伝え聞いた武馬先生は、電話口の向こうで絶句されたという。
「まさか、彼が私を覚えていてくれたなんて・・・」。
もちろん、勤務校が変わったあともアマ、プロ通じて活躍目覚しい教え子のことは、先生の頭の中にずっとあった。
「彼のことは、いつも陰ながら応援していましたが、受け持ったのはもう30年近くも前のことなんです。まさか彼のほうは、私のことなど覚えているわけがない、と。だからお話を聞いたときは、すぐには信じられなかった」(武馬先生)。
母校の校長室で約30年ぶりの再会を果たした2人は、互いに手を握り合ったまま、どこか照れたようにいつまでも笑い合った。
武馬先生の記憶の中の桑原は、「やんちゃで、スポーツなら何でも得意で、いつも運動場を走り回っていた元気な男の子」だ。
「それが、こんなに立派になって、しかも私のことをヒーローだったなんていってくれる。嬉しいような、恥ずかしいような・・・」と、顔を赤らめた武馬先生。
再会のあとは武馬先生も校庭に出て、在校生を相手にスナッグゴルフの“教鞭”を執る教え子の凛々しい姿に、目を細められていた。