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ANAオープンゴルフトーナメント 2003

起死回生のバーディパットをど真ん中から決めて、葉偉志がジャンボの連覇を阻止

その瞬間、こぶしを高々と掲げ、葉は思わず叫んでいた。
「イエーイ!!」
しかしそれもすぐに、大ギャラリーの地鳴りのような歓声に、のみ込まれていった。誰も予期しえないことだった。1打ビハインドの18番パー4。葉が、10メートルの バーディパットを決 めた。今季日本ツアー初参戦の“ルーキー”が、土壇場の再逆転で、大会7勝を誇る ジャンボの連覇を阻止したのだ。

「僕だってもうほとんどチャンスはない、と思ってた。朝からすごいプレッシャー で、がちがちでした しね・・・」。

最終日の相手は、小さいころから衛星テレビでその姿をずっと見てきた「スーパース ター」だ。しかも ロープの外には、通算114勝目の瞬間を見届けようと駆けつけた数千人もの大ギャラ リー。
緊張しないわけがない。

1番、3番でバーディを奪ったものの、4番でティショットを左林に打ち込んで脱出失 敗。「高い球で狙 おうとしたら木に当たって」ダブルボギーだ。6番、7番では連続ボギーを打つなど、 苦しいラウンドが 続く。
15番で、手前バンカーからのアプローチが寄せきれず、3メートルのパーパットを外 した。通算10アン ダー。いよいよジャンボに並ばれた。次の16番パー3ではジャンボがピンそば1.5メー トルにつけるスー パーショットでバーディを奪い、とうとう逆転を許してしまった。17番パー5は両者 パーに終わり、い よいよジャンボ連覇へのカウントダウン。

しかしこのとき、葉はようやく落ち着きを取り戻していた。18番のティグラウンド で、気が付く。「あ まりのプレッシャーに、今日はずっとスウィングが早くなっていた・・・」。
もっとリラックスして、ゆったりと振っていくことに決めた。
「台湾の芝に似ているから」と、前日まで好調をキープしていたパッティング。この 日に限ってずっと 、カップ手前でショートばかりしていた。

「届かなければ、チャンスはない・・・」。最終ホールで、ジャンボが第2、3打目とミ スを重ねた。そのスキを突いて「強気で打った」起死回生のバーディパットは果たし て、ど真ん中からカップに吸い込まれていったのだ。

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