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フジサンケイクラシック 2000
「あのときとは、違う勝ち方がしたい」久保谷健一
プレー後の練習も終えて、宿舎に帰ろうとしていた久保谷(=写真)は、「風の便りにトップに立ったと聞いて、びっくり! 皆さん崩しちゃったんですね・・風が強くて、難しかったですから・・・」。
「ここ(川奈)はイメージがいい」という。97年大会。当時賞金王1位の尾崎将司、同2位の金子柱憲やカルロス・フランコ、丸山茂樹など、ビッグネームを押さえて、初優勝をあげた。最後の80センチのウィニングパットを決めたときは、「神さま」とあおいでいた同組の尾崎に「よく入れたな」と肩をたたかれ、感激した思い出がある。「ここは僕にとって、良いイメージでプレーできるコース」と言いきれるもの当然だ。
しかも、多くの選手が苦しむ“川奈の風”も、久保谷にとっては、強い味方だ。「僕は風が吹かなかった年の川奈はかえってダメなんです。風がない日は、『風が吹いていればここはこっちに打つんだけど』とかいろいろ考えすぎてるうちに、まわりがスコア伸ばしちゃって取り残されちゃう。でも、風が吹いていたら、ひたすらそれに立ち向かっていけるでしょ。ちょっとはずしても、『風があるんだから』って思えるし。無風だと、川奈という感じがしない。風が吹けば吹くほど、川奈のイメージはいい」。
左の海から吹き上げてくる強風の影響をまともに受け、毎年、高い難易度を示すあがり3ホール。久保谷は16番で左バンカーからの第2打をOKにつけてバーディを奪うと、17番パー3では、右ガケ下からのアプローチをピンにあてる快心のショットで1 メートルに寄せてパーを死守。そして難易度1位の18番(平均ストローク4,558)では、18メートルものバーディパットをど真ん中から決め、バーディで締めくくった。
「18番で、バーディ取った人なんてそんなにいないんじゃないですか? きょうはこの3ホールがすべて。一緒にまわった深堀さんにも、『いいな、ゲリラばっかりで』って嫌味言われちゃいました」。
この日のスコアカードをまじまじと見つめ、「今日は、勝ったときのバーディの取り方と似ている気がする」と久保谷。しかし、ただあのころのイメージを、懐かしむだけではない。アゲンストの風の13番パー4では、いつもより1クラブあげてグリーンを狙ったが、40ヤードも押しもどされてショートさせ、「それほど川奈の風が重くて、影響が出るとは思わなかった」と反省。「次の14番では、2クラブあげて打ちましたよ」と、新たな“学習”も忘れない。
「あのときと違うパターンの勝ち方がしたいんです」。ゴールデンウィークの最終日には、生まれ変わった“ニュー久保谷”を、ファンの前に披露するつもりだ。