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アンダーアーマーKBCオーガスタ 2006

手嶋多一、ツアー通算4勝目は地元・福岡での初勝利

10年かけて、やっとつかんだ。地元・福岡での優勝に、満員のギャラリーから「待ってました!」の声援が飛ぶ。あれは96年のこの大会だった。
当時27歳の手嶋は、最終日9バーディの猛チャージで、初日から首位を走るジャンボ尾崎をとらえてプレーオフに持ち込んだ。
「一度は勝った、と思った展開だった」。
結局、2位に甘んじた。そして、翌年97年もジャンボに次いで2位。
あのとき、つかみそこねた栄冠が、いま目の前にある。

パーパットを決めて、拾い上げたウィニングボールは迷わずスタンドに投げ込んだ。
日ごろから「期待されるのは苦手」と言って笑う男が、妻・直子さんほか家族と、地元ファンが見守る中でようやく頂点に立った。
「ここで一度は勝ちたい。・・・いや、勝たなければ」10年間、背負い続けてきた重圧をひとまず下ろした。

最終日、最終組で回ったのはホストプレーヤーの増田伸洋と、ツアー最年少優勝を狙う19歳のドンファン。
揃って真っ赤なウェアを着て、闘志を全面に押し出して戦う2人に比べ、37歳の終始冷静なゲーム運びが光った。
「僕のポイントは、アプローチとパット」。
得意の小技を駆使して、チャンスを作った。
ツアーの開催コースで唯一となった芥屋の高麗グリーンは、カップの淵にぶつけるほどの強気のパットで攻略。

前半、3番からの4連続バーディを糧に単独首位に踊り出ると、しぶとく食い下がってくる増田の攻撃をいよいよ封じたのは16番パー4だった。

取って取られての攻防戦も、18番までもつれ込むと厄介だ。
560ヤードのパー5は、飛ばし屋の増田に有利。
「僕はあそこではなかなか、バーディが取れないから」最終ホールまでに勝負に出ることに決めた。

残り166ヤードの第2打は、本来なら7番アイアンを持つ場面。
右手前のピン位置に対し「思い切って8番アイアン。ほんとうは怖かったけれど、短いめのクラブで思い切って打った」。

狭いエリアに落ちたボールは、ピン手前で2、3回小さく弾むと、50センチで止まった。
このバーディで増田を再び1打差で突き放すと、さらに18番では敵のOBを誘って逃げ切った。

地元での初勝利は、3年ぶりのツアー通算4勝目だ。
一番つらかったのは昨年のシーズン序盤。
「プロ人生初だった」という、開幕から4試合連続の予選落ちの屈辱。
そのことで、前年8月に結婚したばかりの直子さんに、ありもしない風評が立ちはしないかと気遣って、内心ますます心を痛めていたものだ。

それだけにこの福岡で、そして直子さんの目の前で、勝てたことに意味がある。
普段から、大勢の前で自分のプライベートを話すことを嫌う“九州男児”が、優勝インタビューでてらいもなく言いきった。
「家に帰れば、彼女がいてくれる。結婚して、そのことがほんとうに有難かった」。
手嶋が10年の月日をかけて手に入れたのは、地元での初勝利だけではなかった。
  • 妻・直子さんの前で勝ったのも初めての経験「ようやく、いいところ見せられました」(手嶋)

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