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キヤノンオープン 2008

桑原克典が単独首位に(2日目)

プロゴルファーは、「見た目と足の裏から伝わる感覚を元にスピードを計算する」。それから判断する限り、ここ戸塚カントリー倶楽部のグリーンは、重めなはずだがこの日、トップスタートの7時40分にティオフした桑原は面食らった。
「思いがけず速かった」。

特に下りの順目は相当なもので、出だしの1番から戸惑った。
2番で案の定、打ちすぎた。
一瞬、ヒヤリとした5メートルのバーディパットが運良くカップインしたことで、「頭を切り換えることが出来た」。

そのあとも決して“お先”はせず、必ずマークして慎重にプレーしたのが良かった。
通算7アンダーは単独首位に躍り出たが、桑原が気にしていたのはツアー通算3勝目のことではなかった。

この時期、シード権を争う選手たちの中で決まって話題になるのが、獲得賞金のボーダーラインだ。賞金ランクの上位70人で線引きされるそれは、試合数や賞金総額によって、年度ごとに微妙に変わる。

95年に初シード入りして以来、“常連”だったころには眼中にもなかった。
しかし、2006年にシード落ちして3年目。
桑原も、そういう話しにすっかり詳しくなった。

昨シーズンと今季の賞金総額と、試合数をパーセンテージで割り出して「今年は1400万円行くか行かないか」と、そろばんをはじき出す選手がいる。
はたまた、今季前半と後半戦の試合数と賞金総額の差を対比して、「今年は1500万円」と算出する者もいる。
その中で、漠然と「1800万円」と踏んでいると打ち明けた桑原に、報道陣からさらに確かな情報がもたらされた。

「2006年の賞金総額が今年とほぼ同じなんです。その年は1500万円だったから、今年もそれくらいになるんじゃないでしょうか」と言われ、たちまち表情が輝いた。
「それは、素晴らしい情報です」と桑原。
「さっそく、みんなに知らせよう」と、嬉しそうに手を打った。

そんなわけで、単独首位のインタビューでもその話しに終始した。
せっかくのチャンスを前にしても、優勝争いはそっちのけの自分を「許して欲しい」とファンにわびた。

シード権を失って初めて痛感した、1年間安定した成績を出してそれを守ることの難しさ。
「今の僕には、それが第一条件で・・・。夢がなくてスミマセン」と、頭を下げた。

1400万465円稼いで、現在の賞金ランクは47位。
先の情報を元に計算すれば、あと100万円ほどでシード復帰に手が届きそうだが、好材料に喜びながらも、完全に鵜呑みにはしない。
「シード選手たちの追い込みは、想像以上に激しいんです」。
この2年で目の当たりにしてきた終盤のどんでん返しを警戒して「今は無理をせず、少しでも1円でも多く稼ぐことしか考えていない」。
優勝を意識するのはそれからだ。

晴れて「ノルマ」を達成したら「久々に伸び伸びとプレーしてみたい。3年間、窮屈なプレーをしてきたからね」。
その日を励みに、いまは堅実なゴルフを貫くと誓った。



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