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サン・クロレラ クラシック 2003

『頭がパニック状態だった』本戦の18番でイーグルを外して一度は諦めた勝負。ふいに訪れたチャンスにブレンダン・ジョーンズは・・・

極度の緊張から解放されて、ジョーンズはそのころ、クラブハウスの風呂にいた。 シャワーを浴びて、さっぱりとした体に普段着のジーンズとTシャツをひっかけて空 港に向かい、16時30分発の飛行機を乗り継いで、この日のうちにいったん帰国する予 定だった。心はすでに、フィアンセの待つ母国・オーストラリアに向いていた。
帰り支度も万端整えて、ロッカールームから出てきたときだった。大会のスタッフが 駆け寄ってきて言った。
「ジョーンズさんっ! すぐにプレーオフの準備をしてコースに戻ってくださ いっ」。
一瞬、何を言われたか分からなかった。「何?プレーオフがどうしたって?」ぐずぐずと聞き返すと、スタッフは、今度はイライラしたように言い返してきた。「丸山さ んが18番でボギーにしたんですよっ」。
それからはもう、何がなにやらわからなかった。とにかく、大急ぎでもう一度、ゴルフウェアに着替え直し、すでに宅配便に出していたキャディバッグを引き戻し、キャ ディと息を切らしてプレーオフホールの18番へと向かった。
対戦相手の丸山大輔、手嶋多一の2人はすでに、カートに乗ってティグラウンドに向 かっていた。最後にグリーンに登場したジョーンズにも「がんばれよっ!」スタンド から声援が飛んだ。涼しい笑顔で手を振って応えて見せたものの、実はいきなり訪れ たVチャンスに動揺して、心臓が今にも破裂しそうだったのだ。
先の本戦の18番では、ピン手前5メートルのカラーからイーグルチャンスだった。入れれば通算9アンダーで逆転というパットは、「本当に、ドキドキしながら打って」 そして外した。バーディで、通算8アンダーにしてトップの丸山、手嶋と並ぶのが精 一杯。しかしその直後に、2つあとの最終組で回る丸山が17番でバーディを奪い、1打リードされたことを知った。続く18番パー5もチャンスホールだ。「9アンダー以上 で丸山さんの優勝だ。プレーオフの可能性も絶対にない」そう決め込んで、さきほど 早足で後にしたばかりの18番ホール。それがいま、再びこうしてティグラウンドに立っている。「すぐには、この状況が信じられなかったよ。頭の中がパニック状態に なって、しばらくは何も考えられなかったくらいだったんだ・・・」。

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