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JCBクラシック仙台 2006
桑原克典「いつか、ゴルフ版“イナバウアー”を決めたい」
わかっていても、途中でプレーを投げ出したいほど気が急いた。
「もしプレーの進行が少しでも遅れたら・・・」と、思うと気が気ではなかった。
アテストを終えるなり、会場のギャラリープラザに駆けつけた。
金メダルの瞬間は、ライブで見た。
一瞬、我を忘れるほど感動していた。
そして、思った。
「自分も、荒川さんのように。感動させるプレーをゴルフで見せたい」。
いつも目につくように、荒川さんの“イナバウアー”の瞬間を捉えた雑誌の切抜きを、自宅のトレーニングルームに飾ったほどだ。
「感動した、なんてもんじゃなかった。日本中の期待が集まるプレッシャーの中で、完璧な演技で頂点に立ったんです。尋常な精神の持ち主じゃない。まさに超人」。
畏怖の念さえ抱く荒川さんが今週、会場に来てチャリティ活動を行うと聞いて「ぜひ、協力したいと思ったんです」という桑原。
自身も、日ごろから社会貢献に強い感心を寄せ、難病で苦しむアスリートへの支援を呼びかけるなど、積極的に活動しているだけに迷いはなかった。
荒川さんに直接会ってこの思いを伝えると同時に、「金メダリストのパワーをもらいたい」と考えたのだ。
もちろん、荒川さんと対面するためには、チャリティ販売のオリジナルティを購入し、荒川さんのフォトカードが受け取れる抽選権を得なくてはならない。
桑原は当選順にしたがって、一番最後の列に並んで順番を待った。
そして、いよいよ最後に壇上に上がってきた桑原に、目を丸くさせた荒川さん。
「・・・びっくりしました〜!!」。
プロゴルファーの登場に、会場も大喜びだ。
桑原は、震える思いで荒川さんの右手を握り締めた。
あこがれの人を前に、つい「僕もそのうち優勝してゴルフ版の“イナバウアー”を決めます」と宣言していた。
「・・・本気ですよ。荒川さんにあやかって、ぜひ優勝したい。ただ今回、狙うのはちょっと無理だけど。明日はホールインワンを達成して、その賞金を全額寄付できるよう頑張ります!」。
せめて最終日は、17番パー3にかけられたホールインワン賞の200万円(JCB提供)を狙って、さらにチャリティに貢献するつもりだ。