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つるやオープン 2002
< 初日、首位に立った選手たち >「今週、上位で自信を取り戻したい」
「今週は、調子が悪い」と言いながら、上位発進したのが、藤田だ。
開幕2戦のあとのオフ期間の約1ヶ月。調整に、たっぷり時間が空いたことが、災いした。
4月11日から始まったメジャー戦のマスターズトーナメントをテレビ観戦するうちに、藤田の血が騒ぎ始めた。
「オレも、誰もが認めるノーマルな、スウィングがしたいな…」
藤田は、フックグリップからカット気味に入れてスライス球を打つ、「個性的なスウィング」(藤田)が、特徴の選手だ。
その持ち味を生かして戦ってきたからこそ、長年、シード権も守れてきたはずで、それを変えようとすれば、ものすごい時間と労力がかかることは重々、わかっていながら、時間的、精神的な余裕ができると、つい、迷路にはまりこんでしまう。
「“標準仕様”に近づけようとして、インサイドインの軌道で振ってみたりするけど、でもそれって、今まで作り上げたスウィングとは、まったく逆の方向を、追い求めなくちゃならなくなっちゃうんですよ。もう、グリップそのものから、直さなくちゃいけないというような、ね。でも、グリップからやり直すのは、ほとんど至難の業。もう、いっそ“生まれ変わるしかない”ってくらい、難しいことなのに、それでも、ノーマルにしたほうが、飛距離が出るんじゃないか、とか、つい欲張ってしまって…」
そんなわけで、休みの間にすっかり調子を崩してしまった藤田は、つるやオープンの前週、師匠のもとを訪れた。
藤田のスウィングのいちばんの理解者である芹澤信雄。
師匠の地元・御殿場で、仲間の宮本勝昌とミニ合宿を張るうちに、なんとか持ち直してきたが、「それでも、10という数字が最高だとしたら、まだ、4、5割程度。完璧に、戻ったわけじゃ、ないんです」。
いったん迷いが生じると、再び元のスウィングに戻すのは、そうたやすいことでは、ないようだ。
それでも、この日初日は、パッティングで、なんとかスウィングの不調を補ってゲームを運んだ。
風速7メートル以上の風が、吹いたことも、奏功した。
得意の「押さえていくショット」で風を味方につけ、伸び悩むライバルたちを尻目に首位タイ発進。
「今週、このまま、上位に入って、また自分のスウィングに自信を取り戻したい…」藤田の思いは、切実だ。