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ANAオープン 2009

久保谷健一「明日は今日の貯金を使います」

ホールアウトするなり疲れ切った表情で、「座ってもいいですか?」と、取り囲んだ報道陣に断った。クラブハウスそばの片隅の排水溝の上に腰掛けて、肩を落としながらつぶやく。「何で疲れているかって? いや、ちょっとね、ショットが曲がりすぎてて。今日も奇跡的なゴルフで」。

さっそく、ボヤキ始めたリーダーに、そばを通りがかったもうひとりのリーダーが横やりを入れた。
「ケンケン」と久保谷を愛称で呼び、「またネガティブ発言してるんでしょう?!」と鋭く言い放ったのは、矢野東だった。

矢野が“酒豪”だったころの飲み仲間で、今は練習仲間の久保谷は、昔からそうだったという。
「ダメだ、ダメだと首をかしげながらも今日だって、6アンダー」(矢野)。
ボヤキながらも、首位に立つのがこの人のスタイル。
「だめだよ〜。ケンケン、そういうのは!!」。
ディフェンディングチャンピオンに咎められても、本人には納得のいく内容ではないのだから仕方ない。

「ショットが思うように打てなくて。完全に振り遅れた状態。途中から、何がなんだかわからなくなって。パットがどうにかカップの端っこから入ってくれたというようなのばっかりで…」。
散々愚痴を並べたあとで「今日のゴルフは久々に運が良かった」と、一言でまとめた。
17番のイーグルが、久保谷の気持ちを象徴していた。
「今年一番長いパット」は、20メートルを優に超えていた。
それがやっぱり、カップの端っこからぽとりとカップに落ちて、首位タイスタート。
「明日は、今日の貯金を使います」とぽつりと言って、「よいしょ」とマンホールの上から立ち上がった。

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