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日本オープンゴルフ選手権 2010
藤田寛之が単独首位に
かわりにこの日は、持ち味が光った。
スタート前に、感触を確かめた1番ティ横のパッティンググリーンと、いざコースのグリーンとの「ギャップ」に戸惑い、4番で15メートルのバーディトライを打つまでは、「弱かったり、強く打ったり」。
1番で1メートルもショートしたのを警戒して、2番ではあえて思い切ってヒットした。長い10メートルが、今度はど真ん中から決まって苦笑い。
「入らなければ、6メートルはオーバーしてた」と、ひそかに安堵。それでも、ツアーきってのパット巧者は最初に感じたグリーン上の違和感を、徐々に払拭していった。
8番では得意のアプローチで寄せて、1メートルをしのいだ。
また319ヤードは、藤田も例外なくワンオン狙いのパー4は、右の池に入れた15番を寄せワンのパーで切り抜けた。
最終日を前に、耐えて1打差の単独首位に躍り出て、「ショットが悪いながらも、自分らしいゴルフが出来たと思う」と、胸を張る。
このゴルファー日本一決定戦に出ることが「けっして楽しいことではなくなった」。そう思うようになったのは、いつの頃からだっただろう。
4位につけたアマチュアの松山英樹くんや、またこの日は5アンダーをマークした藤本佳則くんの心境を思いやり、「きっと、何をやっても楽しいんだろうなあ」と、羨む。
「僕も昔はそうだった。出るだけで楽しくて」と振り返る。
もちろん、「今でもこのステージでこの位置でプレー出来ることは、誇りに思う」。しかし、それをただ無邪気に味わう時期は、もうとっくに過ぎた。
プロ14年目。勝ち星を重ね、年齢を経るごとに周囲の期待や、何より「メジャーで勝ちたい」との自身の欲。背負うものが増えるたびに、「楽しいとは思えなくなっていきました」。
41歳。「そういう年齢になった、ということですかね」と、苦笑した。
だがその分、確かに身にまとったものがある。
経験と、巧みな技。そして、類い稀なる集中力。何より忍耐力が問われるこの舞台で「僕は最近の若手にありがちな、ガンガンいくタイプではないけれど。藤田が藤田らしいゴルフをしたときに、周囲もやばいな、と思うでしょう。それを、自分で引き出すことが大事だと思う」。
最終日にやるべきことは、もう分かっている。
課題のショットは、「明日はもう“何弁当”が出てくるか分からない。今からおかずを作っても、明日思いも寄らないメニューになっていると思うから」と、そこに頼りきったり、一喜一憂したりももうやめた。
「自分のゴルフさえ出来れば、優勝の可能性もきっと出てくる。特に自分みたいなゴルファーは、スコアがどうであれ、自分が納得いくようにだけ考えていれば、優勝は自然とついてくる」。
だからなおのこと、その光が見えてくるまでは、「優勝は意識しない。残り5ホールまでは、自分のゴルフに徹する」。そのスタンスは、変わらない。