Tournament article

三井住友VISA太平洋マスターズ 2010

藤田寛之が首位タイ浮上

この選手が会見場で、ひとことも後ろ向きな発言をしなかったのは、いつ以来だろう。10バーディ1ボギーの63は、「最近のストレスを一気に晴らすラウンドでした」。

6番からの4連続バーディと、15番からの3連続にも「今日1日ショットが安定してたくさんチャンスを作ることが出来て。それを次から次へと決めることが出来ました」と、風邪気味の鼻声にもかかわらず、表情には充実感がにじむ。

近ごろ悩みのショットと、得意のパットが完璧に噛み合ったのは、前日2日目にトップに立った弟弟子の宮本勝昌同様に、やっぱり師匠によるところが大きい。

先週のシニアツアーで“ルーキーイヤー”にしてシニア初Vをあげた芹澤信雄は、大会前日の水曜日に51歳を迎えた今週、きっちりと予選を通過して、金曜日も練習場で、弟子たちが来るのを待っていてくれた。

火曜日の練習日から、連日の特訓を受けて、芹澤の言うとおりに体を動かすうちによみがえってきた自信。それが確信に変わったのは、前日のうちに改めて、芹澤のこの言葉が聞けたから。

「それでいい。それを、コースでもやればいい」と言われて、それまで感じていた違和感も、すっかり晴れた。

この日の朝も、「芹澤さんが言うとおり、思い切り大胆に左に振り抜いて来ます」と、元気よく宣言して出ていった。

「それが今日のこの結果です。フェード気味のストレートというのが僕の考える勝負球なんですが、今日はそれが3度も出た。こんなショットが打てたのは、本当に1年ぶりくらい」と、舌も滑らか。

ついに首位を捉え、最終日は石川遼と最終組で戦う。「敵は遼くんだけじゃない。その下にも20人くらいいる」と、慎重派の警戒心は相変わらずだが、賞金ランク2位と、同3位の2人が揃って優勝を争う。願ってもないそのシチュエーションを、素直に喜ぶ余裕もあった。

以前はネガティブな発言が目立った賞金レースについても、「今日くらいのショットが打てると、明日もポジティブに考えてプレーが出来る」と、がぜん前向き。
「自分の使命としては、最後の最後まで、18番までそうした位置にいて、最終的に優勝出来れば一番いいと思います」と、はっきり言えるほど、やる気も出てきた。

ついでに、勢いに任せて言った。「今のゴルフ界は、遼くんとチーム芹澤が背負っている」。そのココロは藤田を筆頭に、4位の上井邦浩に6位の宮本勝昌に、芹澤を師と仰ぐ面々が、今大会は最終日を前に、揃って上位に顔を連ねたこと。

また「シニアから下は上井まで。元・選手会長(宮本)もいますし、幅広い世代が揃って、それぞれが重要な役割を担っている」と、アピールした。さらに「その一番上に立つ芹澤さんは、本当に素晴らしい人だと思います」との一言を、付け加えることも忘れなかった。

あとで、会見の一部始終を伝え聞いた芹澤が「あの藤田がそんなことまで言ったの?!」と、心底驚いたというリップサービスぶりに、最終日も地元・静岡に明るい話題を提供出来そうな予感だ。

関連記事