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カシオワールドオープン 2010

初シード入りの岡茂洋雄(おかもひろお)が喜びとともに、心を痛めていることは・・・

30歳で、脱サラ。98年にプロ転向を果たした41歳が、紆余曲折を経て初シード入りを果たした。

2002年に手首に難病を発症し、クラブさえ握れない日々を乗り越え、ようやくこの日を迎えた。
「まさか、ここまでたどり着くとは思わなかった」と、感無量だ。

昨年のファイナルQTランク58位の資格では、今季シーズン序盤は待てども出場権は巡って来ず、4月のつるやオープンは、本戦の予選会「マンデートーナメント」に挑戦して扉をこじ開けた。本戦にコマを進めて11位に食い込んだ。

最初のリランキングで大きく飛躍して自力で出番を増やし、いよいよ9月のANAオープンで4位タイにつけたのが、大きかった。

この2週前にはラッキーもあった。
現地で欠場者が出るのを待つ、リランキング制度を利用して会場に足を伸ばした三井住友VISA太平洋マスターズは開幕前日までは、いわゆるウェイティングの2番目につけていたが、昨年覇者の今野康晴が欠場を決めた大会初日に、同1番目の谷昭範が渋滞に巻き込まれ、スタートに間に合わなかった。

思いがけず巡ってきたチャンスを岡茂が最大限に生かせたのも、この人の存在が大きかった。
シード選手の河井博大やツアー1勝の富田雅哉が師匠と仰ぐ田中秀道は3つ年下ながら、同じ広島県出身という縁もあり、岡茂も心酔している。

今年も一緒に練習を重ねる中で、岡茂も実にさまざまなアドバイスをもらい「秀道がいなかったら、ここまでは来られなかった」と言うほどだ。

その恩人は、体中に故障を抱えたまま米ツアーから帰国して以来、いまだシード権を取り戻せずにいる。
田中は主催者推薦を得たこのカシオワールドオープンで、賞金ランキング102位からの逆転・シード入りを狙い、土壇場に大健闘したが、トップ5入りの厳しい条件には及ばず最終日は16位タイ、賞金ランキングは87位に終わった。

シードのボーダー線の次点の71位から、賞金シード以外の有資格者や、出場義務試合数に満たない選手を除いた上位10人に、次週の予選会ファイナルQTの出場権が与えられるが、田中はちょうどその10人目に食い込んで、どうにか首をつないだ。

「気持ちを切り替えて頑張ります」という田中に、誰よりも熱い声援を送る一人が、岡茂だ。
シーズン途中に岡茂が言っていたことは、「秀道は本来、そういう位置にいる選手ではない。必ず表舞台に戻ってくる。いや戻ってきてもらわなければ、僕が困るんです」。
それは、同時に大勢の“秀道ファン”の思いでもある。

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