Tournament article
カシオワールドオープン 2010
賞金王争いは次週に持ち越し!! 藤田は脱落・・・
ランク2位の石川遼が、有言実行の猛チャージを見せた。5打差から出た最終日はスタートから相当、気合いが入っていた。1番で約2メートルのバーディチャンスを外して、思わず咆えた。
「こういうパットをしていたら、今日も入らないだろうと、自分に言い聞かせた。狙いがカップ左なら、そこに向かって出さなければいけないだろう、と。散々、朝の練習場でやってきたことが、コースでなぜ出来ないのか、と」。
自らに激しくムチ打って、3番で2メートルのバーディで不安を払拭して弾みをつけた。
13番で、この日5つめのバーディで目標にしていた通算10アンダーにして、「自分にも優勝のチャンスは十分にある」。
一時は首位に1打差まで迫り、「最終戦までもつれさせたい。そういう気持ちがあった。思い描いていた通りのゴルフが出来た」。
残り1戦を前に、金に約2800万円差は次週に望みをつないで「来週は自分が勝つことが大前提。4日目にいかに、優勝を狙える位置にいられるか。来週、またちゃんとした仕事をするために、明日の月曜日から練習したい」と、いっそう気合いが入った。
そして石川に次ぐ、賞金ランク3位からの逆転・賞金王を狙う池田勇太もまた、思いを新たにした。
「来週はものすごく単純、勝てばいい」。
本当は、このカシオワールドオープンで、実現する気満々だった。先週のダンロップフェニックスに次ぐ2週連続Vは、今季5勝目で金の背中をがっちりと捉えるはずだった。
最終日は首位タイからのスタートに、やはり相当に気合いが入ったが特にグリーン上で、イライラがたまった。最終18番でもバーディトライが決められず、首をかしげ、顔をしかめながら上がってきた。
「今日はパターだけだな。一発入ってくれれば流れが変わったかも」と憮然と、「まあ、入れられない自分が悪い」。金とは約3600万円と次週にチャンスを残せたことを励みに、気持ちを切り替え優勝賞金4000万円の、最終戦に挑む。
そして、安定したプレーが何より持ち味の金は、この日珍しくボギーが先行した。さらに後半は11番からまさかの3連続ボギーを打って、「いえいえ、時々あります。今年もありましたよ」と、そこはいつもの余裕の微笑みで、最後は表情を引き締めた。
「あと1試合。勝った人が賞金王になると思う。今はリードしていても、2人と同じ位置にいると考えてプレーします」。依然としてランク1位で迎える最終戦。韓国人初の賞金王に向けて、最後の力を振り絞る。
一方、賞金ランク4位の藤田寛之はこの日13位タイに終わり、賞金王のチャンスは完全に無くなった。
この週は、地元四国は香川県出身の妻・優合子さんが、7歳になる長男の大稀くん、1歳は次男の和己くんを連れて、実家から毎日車で1時間かけて、応援に駆けつける中で奮闘を重ねたが、「上を捉えるには、距離がありすぎましたね。調子も良くなかった」と、完全降伏した。
同時に、肩の荷を下ろした。夏以降は師匠の芹澤信雄さえ認めるほどの不調ぶりに、それでも周囲の期待に応え、前を向かなければ、という重圧があった。
「賞金王を狙うような、高いレベルで戦えない不甲斐なさ」。忸怩たる思いを抱えながら、それでも上を目指していこう、ともがきにもがき抜いた1年だった。
ようやくそんな葛藤からも、開放される。
もっとも、そんな思いをしてまでも、底なしの向上心は相変わらずだ。41歳。「また、来年の賞金王を狙えるチャンスが来る、とは限らないけれど。それでも今年のこの戦いは、必ず今後の自分の肥やしになる」という確かな手応えがある。
無類の完璧主義者は同い年の丸山茂樹に、「いつまでも何言ってるんだよ、とマルにはよく呆れられる」と言って照れくさそうに笑うが、それでも夢を語ることはやめない。
「常に最高を追い求めていきたいんです。気持ちだけは20代なんです。まだまだ、上手くなりたんです。情熱が続く限り、そして体が続く限り、これからも頑張り続けます」と、来季もアラフォーの底力を見せつける気満々だ。