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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2010
逆転の賞金王へ、池田勇太が単独首位、石川遼は・・・
この日の池田のゴルフをして、金が言う。
「池田さんは、ショットもパットも完璧でした」。
本人も、「しょっぱなでいいバーディが取れた」。1番で6メートルを沈めて弾みをつけると「流れを切らさず、最高の18ホールが回れた」と、まさに自他共に認める完璧な1日だった。
この日7つのバーディは、6番で下から2メートル弱のストレートや、7番は「ピンハイの5メートル」。11番の4メートルの上りフックなど、数々のバーディトライも「よう入れた」と、自画自賛。
そのほか、「惜しいバーディもあったりしたが、入らないときも、我慢して良いゴルフが出来たと思う」。
また、14番では残り102ヤードで横60センチにピタリとつけて「ナイスなセカンド」。
締めの最終18番は、ツアー屈指のパー3で右横のラフから絶妙の寄せを披露して、「難しいところからナイスパー」と、ボギーなしの63にまとめあげ、絶好の単独首位スタートにも切り替えは素早い。
「今日は今日で、もう終わりましたから。明日は明日で、また自分なりにいいゴルフをして3日目に、4日目につながるようなゴルフがしたいと思います」。
そんな池田に、金は「池田さんには、優勝のチャンスがある」。この期に及んでのほほんと、ライバルの今季5勝目の可能性をほのめかした。そうなれば金は最低でも8位タイで、この最終戦を終わらなければ、賞金レースでも逆転をくらうが「今日は、私も良いプレーをしましたから」と、余裕しゃくしゃくだ。
「キョンテは、最初なかなかパットが入らない中でも、しっかり4アンダーで回ってノーボギー。多々惜しいのが全部入っていたら、どうなっていたか。俺よりもずっと結果は良かったんじゃないか、と予感させるゴルフだった。輝いていた。敵にするには十二分のゴルフ」と、池田も相手に不足はない。
この頂上決戦は、慣例により初日は賞金ランキングの下位から、ペアリングが組まれる。自ずと、三つ巴の最終組は、1番スタートから大ギャラリーの熱気で満ち溢れたが、「緊張の“き”の字もなかった」とは池田。
金は、「コースの両サイドが凄い人で、コースが狭く感じたが、私はそれのほうが、ますます集中出来る」。
しかし、石川遼は「シリーズが持っている独特の雰囲気。頭が真っ白になってしまった」。
加えて、金を約2900万円差で追う立場で、勝つしかないという状況に、冷静さを欠いた。1番から再三のバーディチャンスにつけながら、決めきれない。「自分の気持ちが弱かった」。
分かれ道は、6番だった。
金が、右に曲げながらキックしてフェアウェイまで戻ってきた運を最大限に生かしてイーグルを奪ったこのパー5で、石川は左にOBを打った。
3連続ボギーを引き金に、不運が重なった。
11番は、バンカーショットが木になった。松の木越えを狙った3打目は、枝に引っかかったまま、落ちてこなかった。アンプレヤブルを宣言した上でボールをふるい落として1打罰のトリプルボギーに、もはや収集がつかなくなった。
6オーバーは、まさかの最下位スタートに、「アンラッキーもあって、遼には厳しいラウンドになってしまった。俺が、もう少し場を盛り上げられたら良かったのに、とそういうふうに思う」と、池田がその心情を気遣かった。
石川は「今日のプレーはみなさんには不運に見えたかもしれないけれど、そうじゃない」と、強く首を振った。
「自分のミスが生んだ結果です」。
練習場では、「最高のスイングが出来ている、と思っていた」。ウッズをお手本に、左寄りにボールを置いたアドレス。「今考えると、全体的にクローズになっていたと思う」。そのせいで「フォローで詰まって、スムーズなスイングが出来ていなかった」。知らないうちに、スイング改造の弊害が、出ていた。そのことに最後まで、気づけなかった。
「それが失敗だった」。
2人に詫びた。
「一緒に回った池田さんとキョンテには、本当に申し訳ない。素晴らしいプレーをしていた2人のリズムを、崩しかねない今日の僕の内容でした」。
また、大ギャラリーにも「謝っても解決はしないのですが」と前置きした上で、「期待してくださった方にも申し訳ない」と、頭を下げた。
のっけから池田とは13打差。金とは10打差がついてしまったが、これで終わりというわけじゃない。予選落ちがないこの頂上決戦。
「それが救い。残り3日で挽回出来る機会を与えていただいたと思って、最後に本当の拍手を頂いて終われるようにしたい」と、懸命に顔を上げた。
「6オーバーでプレーした選手が言うのもおかしいけれど」と、そこはちょっぴり苦しそうに、それでも幸い、ホールアウト後に直行した練習場で、スイング修正出来たことを励みに、「明日以降は、アドレスに特に気をつけてスムーズにスイング出来れば1日5アンダー、6アンダーも夢ではない。池田さんとの差を縮めることも、夢のまた夢ではなくて、夢なんじゃないかな」。
石川らしい独特の言い回しで、巻き返しを誓った。