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フジサンケイクラシック 2010

藤田寛之は「抜かれて良かった」

6月の日本ゴルフツアー選手権から13週間、守り続けてきた賞金ランキング1位の座をついに手放した。藤田が、このフジサンケイクラシックで今季2勝目をあげた石川遼に、約300万円差でついに抜かれた。

だがむしろすっきりとした顔をして、「これで良かった。肩の荷が下りました」。夏以降、ずっと居心地の悪い思いをしてきたからだ。

「思い通りのショットが出来ない。絶不調です」と、ここのところ景気の良い言葉は出てこなかった。
海外メジャーは7月の全英オープンから8月の全米プロと、米ツアーを挟んで国内合わせて「プロ入り初」という6試合連続の予選落ちを喫した。

「こんなに悪いゴルフでトップにいることのほうがおかしい。いっそ、誰か早く抜いてくれないかな」と、妙な懇願をした週もあっただけに、藤田には安堵する気持ちのほうが大きかった。

「確かに、トップでいられたことは気持ちが良かったし、毎週のように注目されて気分は良かった。でもいかんせん、ゴルフの調子が悪すぎて・・・。ずっと居心地が悪かった」。

それでも無類の完璧主義者はただ、指をくわてえ石川と薗田の優勝争いを見ていたわけではなかった。
“復活”にむけて、今週も涙ぐましい努力を続けていた。
その中で、痛感したのは「師匠や仲間の存在のありがたさ」。

弟弟子の宮本勝昌は、いつもなら「5分くらいぱっと見て、“こうじゃないですか”って感じなんですが、今週は練習場で1時間も練習に付き合ってくれたんです」。

また芹澤信雄は週末に、わざわざ会場に駆けつけた。前日まで北海道オープンに出場したその足で、ここ富士桜に来て土曜日は1日、藤田のラウンドについて歩いてくれたばかりか、ホールアウト後の練習まで付き合ってくれた。
「宮本も、芹澤さんも、理屈じゃない。感覚的なものを、思い出させてくれました。昔から僕のスイングを知っている人たちならではのアドバイスは本当に有り難かった」。
決勝ラウンド2日間は2日連続の68も「2人のおかげあってこそ」と感謝した。

結局、通算3アンダーは、8位タイのトップ10入りは結果的に、石川にそう水をあけられずに済んだし、ランクは2位に踏みとどまれた。

「賞金王に、あまり興味はないんです。第一、僕が獲るようなツアーでは終わってる」と、どこまでも謙虚な41歳。
本人の意志に反して、それを期待する声は思いのほか多く、その自覚もある。
「もちろんチャンスがあるなら、それに賭けてみたいとは思いますが」。

日本ツアーは翌週から1週間のオープンウィークだが、次週は藤田にとって大一番が控えている。韓国は済州島で行われる日韓対抗戦「現代キャピタル招待 韓日プロゴルフ対抗戦」で、日の丸を背負う。本戦でははからずも、最年長メンバーとしての役割も求められるだろう。
「優勝を持って帰ります。いや、絶対に持って帰ってこなくちゃいけない」。
誰よりも強い責任感でチームを引っ張る。

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