Tournament article
サン・クロレラ クラシック 2011
池田勇太が今季初V、ツアー通算9勝目
17番でやっと5メートルが決まり、再び単独首位で迎えた18番。先に打った平塚の第2打は、カップをかすめた。「なめたのは見えたよ。右淵だろう?」と、敵のあわやカップインの奧1メートルをもしっかりと見届けながら、若大将は冷静だった。
「俺はもう、なんか構えて打ちゃ寄るんだろう」と、この正念場ですらいつものように剛胆に、5番アイアンを握った185ヤードを、ピン手前1メートル強にくっつけた。
ウィニングパットは平塚よりも、先に沈めた。「平塚さんの素晴らしいショットのあとにもかかわらず、自分も素晴らしいショットが打てて、バーディパットが決められたと思う。やっと終わった。今日は特に長かった」と安堵の中で、平塚のバーディに「入れ!」と、エールを送りながらもふと思う。
「平塚さんと、もうちょっとやってもよかった」。平塚もまた、この日はずっとグリーンで苦しんでいた。やっと揃って良い雰囲気になった途端の幕切れには、「もうちょっとやったら楽しそう。そういう物足んなさもある」というのがいかにも勝負師らしいコメントだ。
1打差の単独首位からスタートした最終日は当初から「平塚さんが多分しつこい。キーは“平塚哲二”だ」と、果たしてそのとおりになった。平塚が4番で池に入れ、一時は4打差つけても、池田が気を抜いた場面はひとつもない。
「小樽では、何が起きても不思議ではない」と、これまた予想していたとおりになった。
13番でまさかの3パット。14番ではバンカー目玉でまたボギー。15番で並ばれた。17番で再び1打差で突き放しても、安心など出来ない。
「18番がまだありますし。今日のピンポジなら最後まで、気が抜けない」と言ったとおりに、平塚のピンそばには「俺がバーディじゃないと勝てない」との覚悟もしただけに、最後はまさに渾身の一撃だった。
9勝のうち、これで3勝が北海道での大会だ。2009年は初優勝の恵庭も、昨年は悲願の輪厚(わっつ)も、そしてここ小樽も、3年連続で道内制覇もそれぞれにまた違った赴きと風情があるが、どれも「タフなコース」には違いない。
大好きな洋芝にも、かき立てられる。狙いを定めて挑んだ小樽も制して、思いが深まる。「輪厚で連覇を狙います」。やはり、9月のANAオープンは、これでなおいっそう外せないタイトルとなった。
憧れてやまないジャンボ尾崎に、「今年は早期の1勝を」と言われたにもかかわらず、もう7月も最終日。序盤はクラブ調整の遅れもあって、「ここまで来ちゃいましたけど」と、珍しく照れ笑いを浮かべて「これから2勝、3勝と続けて行けたらいい」。
この1勝に弾みをつけて、今年も年間最多勝利を目指す。3年連続で年間4勝以上を挙げた選手は、過去にまだ青木功とジャンボしかいない。尊敬してやまないビッグネームが打ち立てた偉業だからこそ、並んでみたい。
「やっと目標に向かってスタート出来た」と、悲願の賞金王に向けても、大きな一歩を踏み出した。
でもその前に、世界の舞台で「暴れてくるよ」。次週はアメリカ2連戦。世界ゴルフ選手権はブリヂストン招待と、今季最後のメジャーは全米プロだ。
「初日からがっつり上を目指してく。俺らしいゴルフを魅せる」と勇んで旅立った。