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関西オープンゴルフ選手権競技 2011

77代チャンピオンは韓国の趙珉珪(チョミンギュ)

2011年のジャパンゴルフツアーは11試合が終了して、韓国選手のチャンピオンはこれで4人目。うち初優勝は3人目。またこの関西オープンは、今年77回という長い歴史にあって、韓国人のチャンピオンは史上初。23歳の趙珉珪(チョミンギュ)が、ニューヒーローの仲間入りをした。

5打差をつけて、迎えたサンデーバックナイン。緊張のあまり、11番からばたついたが16番パー5で白(はく)がティショットを左の林に打ち込んだのを横目に、趙(チョ)は5メートルのイーグルトライ。

惜しくも外したが、楽々バーディで勝ちを確信。18番はもう何の心配もない。緊張から開放されて、ゆっくりと流し込んだウィニングパット。両腕を天に突き上げ空を仰ぐと、涙が溢れた。

と、その瞬間にますますズブ濡れになった。この日の大雨で、もはやビチャビチャの髪。その上からこれでもか、と仲間がペットボトルの水を浴びせてきた。手荒い祝福がいっそう涙を誘った。

「やっと勝てたという喜びと、これまで苦しかった記憶と」。

韓国は大邱(テグ)出身だがゴルフはフィリピンで覚えた。7歳のとき、父親の仕事の都合で移住した常夏の国は、冬は日本並みに寒いといわれる韓国に比べて練習環境に恵まれた。メキメキと腕を上げ、フィリピンアマで優勝。これを機に2007年は19歳でプロ転向。と同時に「アジアで一番大きな舞台に立つ」と、勇んで来日した。ツアーの登竜門・チャレンジトーナメントから挑戦したが、何度も跳ね返された。

出場優先順位を決めるファイナルQTの受験回数は4回にして、昨シーズンは22歳で念願の初シード入り。年齢だけで考えれば順調と言ってもいいはずだが本人には「予選落ちをするたびに苦しくて」。出場権の獲得に奔走した日々を思い返して泣けてきた。

昨年からずっとバッグを担いで支えてくれた兄のジェイックさん。「ミンギュは気持ちが強い。絶対にそのうち勝てる」との励ましに、どれだけ勇気づけられてきたことか。
「兄と一緒に勝ち取った初優勝。一生、忘れません」と、感謝の気持ちを噛みしめた。

昨年は、金庚泰(キムキョンテ)の賞金王獲得に、大いに刺激を受けた。「僕もいつかは」。だがその前に「やるべきことは山ほどある」。シード元年の今年、年頭に掲げた目標は「日本ツアーで1勝をあげること」。

ひとつ叶えて夢がまた少し、近づいた。憧れの選手は米ツアーで活躍するK・JチョイとメジャーチャンピオンのY・E・ヤン。「将来は僕もアメリカでプレーしたい」と、この勝利を機に夢はいっそう広がった。

雨中の優勝争いに表彰式は残念ながら、今年開場50周年を迎えた小野ゴルフ倶楽部の風格漂うクラブハウスで行われた。勉強中の日本語で披露した渾身の優勝スピーチを、駆けつけてくださったファンのみなさんにお見せ出来なかったのは残念だが、「今回はそれで良かったかもしれません。まだまだヘタなので」と照れ笑い。
「次はもっともっと上手にお話し出来るように頑張ります!」。さっそく、次の2勝目をほのめかした。

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