Tournament article
中日クラウンズ 2011
復活をかけて・・・ご当地プロ、42歳の桑原克典が発奮
学生時代から、ラウンド数は数え切れないほど。「出場選手の中で、多分一番僕が回ってる」。
和合の罠も、怖さも知り尽くしている。だからこそ、昨年の最終日はとりわけ度肝を抜かれた。石川がマークした世界記録の「58」。「かなり衝撃だった」と桑原克典は振り返る。
それまでの和合は「重ねた年齢と、何より経験がモノを言う」が、通説だった。
まずティショットは安全に刻むのが鉄則。小さく硬い打ち上げのグリーンは、絶対に手前から攻めること。奧に打ち込めば最後、急な下りのラインは3パットを覚悟せよ。
無理は禁物。強引に押せば、必ず大きな怪我をする・・・。
そんな数々の定説が、あっさりと吹き飛ばされた。
石川はほとんどのホールでドライバーを握り、最後までこれでもかと攻め続け、軽々と6打差の大逆転Vを飾った。
「僕らにしてみると、遼くんは絶対にやっちゃいけない攻め方をしてるんです」。
まさに常識外れのゴルフで頂点に立った。新時代の到来を、嫌でも突きつけられた瞬間だった。
特別な19歳だ。「僕が、遼くんのやり方で出来るかといったらそれは絶対に無理で、彼に惑わされてはいけない」と、桑原は言い聞かす。
「遼くんのように、全ホールバーディで、などというのはもってのほか」。
毎年この季節には、この中日クラウンズをひとつ、大きな目標にしてきた。悲願のタイトル獲りのため、特に情報として集めてきたベテラン勢の攻略法を、今さら変更するつもりはさらさらない。
2.5メートルを決めた8番、4メートルを入れた9番、1メートル強を沈めた10番。この3連続バーディに、桑原が頑固に守る和合のセオリーが凝縮されていた。
もっとも14番で、うっかり「若者みたいに」ピンを狙ってしまい、ヒヤリとした分、改めて強引な攻め方は、自分の本意ではないと思い直した。
最終18番はアゲンストの風に対し、右のOBを警戒して左のラフに入れたが、それでいい。第2打は、右の崖下と奧を避けたことによってグリーンに届かず、再び手前のラフに入れたが、後悔はない。寄せきれず、ボギーを打ったが「和合の攻略法に則った」。
通算5アンダーの4位タイは、「おじさんのゴルフみたいな感じだが、それが和合の攻め方だと思っている」と、ブレもない。
首位と4打差で迎える週末も、「若い選手と回って、こんなゴルフでこの数字かと思われるような。和合はこうだ、というのを見せたい」。
昨年は2006年に続く、2度目のシード落ちを喫して今季はファイナルQTランク1位の資格で参戦。「優勝を目標にやっている」。
復活の地としても、和合は申し分のない舞台だ。