Tournament article

三井住友VISA太平洋マスターズ 2012

松村道央は単独首位にも「まぐれですよ」

初日65で上がってきても、「まぐれです」と真顔で言い切るゆえんは、スタート前の練習場で「今年一番、ショットがひどかったから」。
このまま出ても、「80を打つのではないかと思った」。そんな不安で、普段はスタート時間の20分前には、パッティング練習に移るのだが、10分前近くなっても打撃場を離れられない。

結局そのまま、インスタートの10番ティに直行した。諦め半分で出て行ったらこのスコアだ。
「まぐれですよ」と、苦笑いで何度か繰り返したが、実はこんな状態は今に始まったことではなく、まだ2010年に2勝を上げたときの3年シードが残っているとはいえ、今年は賞金シードの保持も危うい。

現在、賞金ランキングは74位。
以前から、「ダウンスイングでクラブが寝て入る悪いクセがある」。それでも帳尻を合わせて「勢いでやっていた」。それを「今年こそしっかり直そう」と向き合った途端に、スランプに陥ったという。

その症状が、一番ひどく出たのがこの日だ。いつも以上に時間をかけて、いくつか改善策を試みたが、「結論が出なかった」との自覚があっただけに、なおさらこの日の7アンダーには、本人が一番目を剥いた。

2ホール目の11番で、「トップで間を持たせるように、スイングのタイミングを変えてみたら今日は上手くいった」と、この最初のバーディで波に乗り、後半は3連続バーディで単独首位に浮上。

「肩でストロークするようにしたら、今日は長いのが入ってくれた」と、5番で9メートルのバーディトライをねじ込み、5人がひしめく2位タイとは2打差。
昨年末に入籍した妻の香織さん。7つ年上の女房と、来月15日には披露宴を控えて「心配かけないように、今年は早めに結果をと思っていたのに、残り3試合になっちゃいました」と、頭を掻く。

“主賓”の師匠にとがめられたのは、つい最近。
「このままだと、俺がスピーチで話すことが、何もないじゃないか」とは、谷口徹。語るべきハイライトもなければ、結婚式も盛り下がるとは、至極もっともな話で、「今日は良いスタートが切れて良かった。VISAで初日に首位で出た、と谷口さんに言ってもらえる」と、なんだか今日1日で、すでに満足しきっている?!

「いやいや、そうじゃないですけども・・・」と口ごもる“新郎”は、「だって今日はまぐれですから」。そう繰り返すばかりなのも仕方ない。この1日では、この1年間悩み続けた深刻な不振脱却の根拠になろうはずがないことは、本人も分かり過ぎるほど分かっているからだ。

関連記事