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ダンロップフェニックストーナメント 2012

武藤俊憲は連覇を逃すも最終日に65をマーク

ディフェンディングチャンピオンは、最終組のリーダーが、ちょうど12番をプレーする頃に上がってきて悔しがった。
今年はルーク・ドナルドの圧勝に、連覇は無理でも、せめてV争いには加わりたかった。
それから1時間半ほど待って、今年も表彰式に参加したが、今回は昨年覇者として、新しいチャンピオンにブレザーを着せかけるためだった。

もういちど、この自分が渋いチェックのブレザーに、袖を通したかったのはやまやまだったが、そのためには「昨日までの3日間がお粗末過ぎた」。
ショットの調子は凄く良い。「でもここぞというパッティングが決まらない」。
グリーン上に精彩を欠いて、前日3日目のプレー後も悔しい思いで練習を繰り返していた。

ふと背後に片山晋呉が立った。
しかし武藤の練習を3球、見届けただけで、行きすぎようとした。
たまらず、武藤はその背中に向かって声をかけた。

「晋呉さん、やっぱり言葉もないほど僕のパットはひどいですか?」。
クルリときびすを返して戻ってきた片山は、「そのストロークじゃあ、カップ周りでボールが逃げちゃうんじゃない?」。
図星だった。
「ちょっと重心が高すぎる。それだと、ストロークも安定しないし、体も動くし、ストロークも安定しない。だから微妙にカップ周りで止まってしまう」。

ありがたい言葉をもらった矢先に最終日の65には、改めて「課題はパット」と思わないではいられない。
初日、2日目と同じ組で回ったルークもそうだ。
「彼の6メートルのパットは、僕らの2メートルという感じ。打てば入りそうな雰囲気がある」。
それと彼の強さの秘訣は飛距離はないが、正確無比なショット。その武器を最大限に生かすゲームプラン。

2日目のホールアウト後にキャディのジョン・マクラーレンさんに聞いてみた。
先月の世界ゴルフ選手権「HSBCチャンピオンズ」。
「あそこの15番で、ルークは2打目をどうしました?」。
「もちろん、刻んだよ」。
武藤は、攻めて2日連続で池に入れていた。
「そうだ、パワーにパワーで勝とうと思っちゃいけない」。
今年のチャンピオンのゴルフはその最大のお手本だ。

「パワーに対抗するためにはショットのコントロールとアプローチとパット」。
ルークと過ごした予選2日間で、改めて考えさせられた。
「それに彼はいつでも冷静だし慌てない。当たり前のことを、当たり前にやれるから彼は強い。彼と回って参考になることばかりだった」と、連覇は逃したが収穫の多い4日間でもあった。

また昨年覇者としてやってきた今年は、さまざまな歓待を受けて気持ちが高まるシーンも多かった。中でも、大会を告知するポスターが武藤のお気に入りだ。

自分のインパクトの瞬間を印象的に描いた1枚は「本当にカッコ良くて。あんなにカッコ良く作ってもらえるとは思っていなかったので」。
記念にいただいて帰りたい気持ちはやまやまだったが、それはあえてやめておいた。
「だって、そういうのはコレクションするものじゃないでしょう? “そういえばあの人、ここで一度勝っていたよね”なんて、言われるのは寂しい」。

大切なのは、一番新しい勝利だ。
「あの人はあれもこれも勝っているけど、今も頑張っているよなと、いつまでもそう言われる選手でありたいので」。連覇は逃したが、ここでの勝ち星は昨年で終わりじゃない。

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