Tournament article
ゴルフ日本シリーズJTカップ 2012
藤田寛之は「俺は家族よりゴルフ」。そのとき妻は・・・
夫は毎日ゴルフ漬け。
たまの休みもやれ練習だ、トレーニングだとほとんど家にいない。
空き週にも、少し長めのオフが取れたと言うから「どこかに連れて行ってくれるのかな」。優合子さんのそんな淡い期待もあっさりと打ち砕く。
「そこは合宿の予定を入れたから」。
分かっていても、ちょっと悔しい。
同時に心配になる。
「体は大丈夫なのかな」。
賞金王は栄誉なことだが、「きっと、これからますますストイックになる気がして」。
妻の懸念は当たっている。
「確かに、マスターズまでは、ちょっとやばいですね」と笑った夫も今回の栄冠は、家族の犠牲の上に成り立っていることを、自覚している。
長男の大稀(ひろき)くんは9歳、和己くんは3歳とわんぱく盛り。「育ち盛りな子供2人を抱えて奥さんは、毎日大変」。
それでも、今の生活を変える気はない。マイホームパパなんて、もってのほかだ。
「仕事と家庭は両立しないが僕の持論なので」。
そういうところは、父親の寛実さんに似て、根っからの九州男児だ。
夫婦の初めての出会いは98年。「誠実な人柄に惹かれた」と、優合子さんは言う。
その第一印象は、今も変わらない。
「でも、年齢とともに、だんだん彼も、彼のお父さんに似てきました。頑固で、融通がきかないところとか」と、優合子さんは笑う。
それでも、超多忙なスケジュールを縫って、大稀くんのキャッチボールの相手をしてくれたり、優しい夫だ。
99年の結婚当初もまさか、夫が賞金王になることは、想像もしていなかった。
それでも、この数年は特に練習量も、トレーニングの量も、トレーニングをする器具の量も一気に増えたことを考えるにつけても、日頃からどれほど夫が努力を重ねているか、妻が一番よく知っている。
家族と今回の余韻に浸る間もなく、夫は翌3日の月曜日にタイに飛ぶ。今は世界ランクの上昇しか頭にない夫は、アジアンツアーのタイ選手権に出場して、さらに順位を上げようという算段だ。
「これからも体には気をつけて、彼がやりたいことをやってくれればいいと思っています」と、諦めも大きな愛だ。
「毎日、ゴルフばっかりして、馬鹿な旦那です」と夫。
「今時、こんな家庭は成立しない」との自覚があるからこそ、感謝の気持ちを禁じ得ない。
「いつも僕のやりたいようにやらしてくれる。奥さんには感謝しないといけません」。
初の栄冠も、理解のある妻がいればこそだ。