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アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ パナソニックオープン 2012

池田勇太は「今週は4週連続の2位か、優勝か」

先週まで3週連続の2位は、データが残る85年以降で言うなら史上3人目の記録(※)だった。希有な例はそんなにも長く好調を維持出来ているとも言えるし、それだけ何度も悔しさを味わい続けているとも言える。

池田はいま、いったいどういう心境でいるのだろう。
「いろいろありますよ。言いましょうか、全部?」と、にやりと笑ってこの3週間を一気にはき出した。

まず1週目は「フジサンケイクラシック」だった。金庚泰(キムキョンテ)とのデッドヒートは「2位で体力的にはくたびれたけど、内容には納得していたので、精神的には楽だった」と、心身共に心地よい疲れ。

しかし続いて「2週目」の「TOSHIN GOLF TOURNAMENT IN 涼仙」は、やにわに気配が怪しくなった。「54ホールに短縮になったから、体は楽だったんだけど」。最終日は中国の呉阿順(ゴアジュン)と、暗闇のプレーオフ4回の激闘は1回ごとに距離を縮めていくという変則方式に「負けて腹立つし、疲れるし、真っ暗だし、最悪だし、どんどんイライラが増すわけよ」。

そして先週だ。「ANAオープン」は、「2週間、優勝争いして疲れて、途中で1回ガス欠だよ」。予選ラウンドでは「闘争心がなくなった」と伸び悩んだ。「頭がぽよーんとなっていた」と、集中力も途切れがち。「顔もイッちゃってただろう?」と、苦笑しながらそれでも、思い入れの強い輪厚(わっつ)で「そこから一生懸命に気合いを起こしてさあ、エンジンふかして」。

最後の最後にやっと追いついたと思ったら、「自滅して。結果また負けて。はらわたが煮えくりかえった」と、若大将のイライラも限界だった。「体もそうだけど、頭の疲れも相当なもの」。

ここらで息抜きが必要だった。それで今週は、開幕前日の水曜日に完全休養を決め込んだ。
「昼までゆっくり寝て、ジムでちょこっと体を動かすだけで、クラブも握らず。わざとゴルフから離れた」という。
今週はプロアマ戦も火曜日に終わっていたから、コースにさえ来なかった。月曜日に無理を押して「ちょっと散歩しとくか」と、下見のラウンドも済ませていたからその必要もなかった。

1年ぶりくらいに丸1日を好きに使って充電完了。初日から、大好きな紫で決め込んだ勝負服。びしっと“正装”とは裏腹に、体も心もどこも余分な力は入っていない。
「本人はいたって普通どおりにやっている」。
それで、この日のこのスコア。
「今日は9個しかパーがない」。しかしその分、「9個もバーディ獲っていた」と、ボギーなしの62に、本人もおかしそうに首をかしげる。

夏の熊本合宿で、「180度考えを変えた」。
今までは、持ち球のフェードで「飛ばそうとか、強い球を打とうとか」。小手先でやってうまくいかずに「もやもやしてた」。思案の末に、ドローボールを取り入れたらたちまち攻略の幅が広がった。

「ドローにフェード。高い球に低い球。引き出しが増えてきたことで、楽にプレーが出来ている」。ここにきて、3週連続の2位は絶好調の証しだ。負けた腹立ちの中にも「春先とくらべたら、レベルはだいぶ上がってきた。かみ合ってきたというか、思うように打てるようになってきた」との充実感も、同じくらいの量だけ感じている。

それにしたって今週は、連続2位記録の更新か、今季初Vか。天秤にかけたら、どちらがいいか。
「優勝・・・というと2位になりそうだから。4週連続の2位がいいと言っておこう」と、そんなあまのじゃくな言葉にも、優勝への飢えがのぞく。
「3度目はもう過ぎた。今度は4度目の正直だよ」。
史上最年少のツアー通算10勝目こそ、この3週間のイライラを吹き飛ばす何よりの良薬だ。

※1985年以降に3週連続2位を味わった選手
・藤木三郎(1992年)
 ミズノオープン2位T、フィランスロピー2位、ヨネックスオープン広島2位T

・尾崎直道(1997年)
 住友VISA太平洋マスターズ2位T、ダンロップフェニックス2位、カシオワールド2位T

・池田勇太(2012)
 フジサンケイクラシック2位、TOSHIN GOLF TOURNAMENR IN涼仙2位、ANAオープン2位T

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