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キヤノンオープン 2012

池田勇太が恒例のベストサポート賞を選出

壁一面の写真から時間をかけて、珠玉の1枚を選び出した池田
2009年に続く大会2勝目。しかし、ツアー初Vから年間3勝目を挙げたあのころから、ますます勝ち星を重ねていった池田には、ツアー通算3勝目のことも、すでに遠い昔の話になっており、大会は2度目の“恒例行事”にも、最初はきょとんとしていた。

「あれ、これは何をするんだったっけ?」。連れて来られた部屋の壁いっぱいに埋め尽くした写真を前に、一瞬呆然と立ち尽くす。

「赤いお花が貼ってある写真が、池田選手への応援メッセージです」と、そこまで主催者の方に説明を受けて、「ああ!」と、ようやく思い出した。「そういえば、前にもやったね!」。

チャンピオンが決めるベストサポーター賞。

キヤノンオープンでは毎年、会場内のキヤノンテントでファンのみなさんから選手への写真応援メッセージを募集している。キヤノンのデジタルカメラで撮影したみなさんの写真に、めいめい言葉を書き込んでいただき、合成プリントしたメッセージカードを、クラブハウス内の選手ラウンジに掲示している。

また最終日には、優勝者を応援してくださった方の中から選手自身が“ベストサポーター賞”のメッセージを選び、チャンピオンのサイン入りの写真をプレゼントすることになっている。

「そうだ、この中から俺が1枚選べば良かったんだよね」と、やっと要領をのみこんで、隅から隅まで目を凝らした。おびただしい応援メッセージの中から時間をかけて選び出した。「これにしよう、このお嬢ちゃん2人に」と、指さした。

プロのフォトグラファーが、キヤノンのデジタル一眼レフカメラでつい先ほど撮影してくださったばかりの写真は、ウィニングパットを決めて笑顔で右手を挙げているシーン。ファンへのプレゼントの貴重な1枚には前回と同じように、心をこめてサインをしたためた。

ツアー制度施行後の最年少記録となるツアー通算10勝目に到達したが、池田は3年前のあのころと、ちっとも変わっていない。剛胆で、一見ふてぶてしい26歳も、関係者のズボンに埃がついていれば、わざわざ自ら腰をかがめて払ってやり、シャツの裾が出ていれば、「出てるぞ」とぶっきらぼうに言いながらも、「しょうがねえなあ」と背中の裾入れを手伝ってやる親切ぶりだ。

困っている人を見たら、ほっとけない。今年も積極的に被災地に入り、被災した子とゴルフをする時間を持った。後輩の面倒見がいいのはすでに周知の事実であり心根の優しさは、池田をよく知る誰もが声を揃える。

恩義に厚い男でもある。
表彰式が終わったばかりの18番グリーンで、大会会長に抱きついたチャンピオンには、これまでまあ、お目にかかったことがない。喜びと感謝の示し方も、とことん“俺流”。

表彰式のあとの記念写真も「トロフィーを片手で持って、左手を突き上げてみて」との報道陣の無茶な要望にも真摯に応えようとするのだが、クリスタル製のそれはとても重くて若大将の力を持ってしても、なかなか持ち上がらない。
「勇太、無理ならいいよ!」と言われても、「いいや、絶対に持つ」と、根性で持ち上げてみせたのが、3番目の写真だ。

前回もそうだったが表彰式を終えてから、記者会見もそこそこに、再びファンの前に飛び出していった。クラブハウスは軽く2周もしようかという長い列。「絶対に全員にサインする」と自ら延々とペンを走らせておきながら、照れ隠しで、「ああ、右手がいてえ!」と悪ぶった。

先週のコカ・コーラ東海クラシックは、最終日に台風17号の影響で、無観客試合にシン・・・と静まり返った中でのプレーには、張り合いも何もなく、その存在のありがたみを痛感したばかりだった。だからこそ今週は毎日のように、また最終日は表彰式のスピーチでも、何度も何度も「みなさんと一緒に」というフレーズを繰り返した。

「ツアーはあと7試合残ってます。誰が賞金王になるかわかりませんが、自分もこの優勝を弾みにまた勝てるように頑張っていきたいと思います。ぜひまた会場にいらしてください。みなさんも僕らと一緒にまたツアーを盛り上げていきましょう!!」(池田勇太)。

  • 「2人一緒に映ったお嬢ちゃんに」と、心をこめてサインをしたためる
  • 「凄くおんもい(重い)」という優勝トロフィーも、根性で片手で持ち上げて、期待に応えてみせた!! 
  • 大会主催のキヤノンマーケティングジャパン株式会社の村瀬治男・代表取締役会長に抱きついて感謝を示した。こんなチャンピオン、ちょっと見たことなかったような・・・
  • クラブハウスを優に半周するほどの長い長い列にも「絶対に全員にサインする」と、ねばった

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