Tournament article
つるやオープンゴルフトーナメント 2013
ジャンボ尾崎が史上初のエージシュートを達成!!
青木功がお祝いのメッセージで一番に触れたのもまずその点で、「エージシュートの難しさは、達成した選手にしか分からない。ジャンボは凄いことをした」。青木も3回、記録しているがそれはどれも、シニアツアーでのことである。
レギュラーツアーとしては、史上初の快挙達成。誰もがまず、そこを称え褒めちぎるのが、人の道理というものだが本人は、頑として言い張った。
「俺は、エージシュートを目指してゴルフはしてない!!」。
あえて聞くまでもない。「俺の目標は、あくまでもツアーで勝つことだから!!」。
ジャンボがいま欲しいものは、次の通算114勝目にほかならない。
そのための努力と執念には、今なお凄まじいものがある。
この日、9つ上の兄に、飛距離で負けた直道は「俺もあの年まであんな努力が出来るかな・・・。いや出来ない」。
近頃はオフに、特に柔軟性を高めるトレーニングに精を出し、日がな1日汗を流す。
「この年になると、右手のフィーリングが非常に重要になってくる」。甲子園を制した徳島の海南高校時代はエースで活躍。ピッチャーとして、プロ野球の元・西鉄ライオンズに入団するなど「若い頃は、黙っていても、右手の振りがやれたんだ」。
しかし昨季は、出場全22試合で予選落ちと棄権を繰り返して、ついにプロ人生で初めて1円も稼げなかった。「寂しくて。ベッドの中で、泣いていたんだ」と笑う。それでも、シニアツアーへの出場をかたくなに拒んで、レギュラーツアーにこだわるからには、「それを跳ね返さないと、現役続行とは言えないだろう」。
プロ44年目の今季に賭ける思いは、誰にも負けない。
「取り戻すことは出来ないけれど、鍛えることは出来る」と、この日のラウンド中も、時間さえあれば右手1本の素振りを繰り返した。
もちろん、飛距離にもこだわる。
「スコアを出すには、ティショットのアドバンテージが取れないと」。ドライバーのシャフトを従来よりも、1インチ長くしたのも、そのための工夫である。「1インチ長いのを、試合で使うためには、練習では2インチ長いので振らなくちゃならん」。そうでなくては使いこなせん。そう一心不乱にこだわりのドライバーを、振り続けた開幕までの4ヶ月。
アイアンも「とっかえひっかえ」。試行錯誤は果てしなく続いた。「アイアンさえ切れれば凄いスコアが出せるのに」。その予感を胸に、先週末にきゅうきょシャフトを総取り替えしたのがハマった。
それと、「これだけ実力が伯仲している中で、良いスコアを出してくる選手は、必ず最後に良いパッティングを入れてくる」。その確たる信念のもとに、これという1本を見い出したのは、開幕前日の水曜日だ。
白いヘッドのピンタイプは、「フラット気味で、シャフトが長くて、球の位置が前寄りになる。バックスイングの残像が、分かりやすいのも非常に良い」と、ひと目で気に入りバッグに入れた。
寸分の隙もなく組立てた緻密な策の集大成が、17番だった。
510ヤードのパー5は、残り217ヤードのフェアウェイから22度のユーティリティで2オン成功。
7メートルのイーグルトライも見事に沈めた。
「良いティショットに良いセカンドショット。そして良いパット。3つ続いたから嬉しくて。自然と出た」と、納め刀のガッツポーズに、握り拳は“定番”のコブラの形。常勝時代の決めポーズには、全18ホールを目の前で見届けた。直道もただただ脱帽して「まるで全盛期のゴルフ。今日の兄貴は、王者みたいなゴルフをした」と、褒めちぎった。
特に後半は、強い風が吹く中での62にも、「調子は良いって聞いていたけど。兄貴の9アンダーは信じられない、ありえない」。
単独首位にも、「3ストロークもちぎってる。試行錯誤して、諦めずにやっている成果。自分もやっているつもりだけれど。全然足んない。ほんと兄貴は凄いと思う!」と、弟が悲鳴を上げれば本人も、「エージシュートより、はるかに良いスコアだろ? 努力の結果!」と年齢を、4つも縮めて上がってきて、高笑いだ。
ここ山の原ゴルフクラブは、93年の日本プロを制したが、「そんなこと、あったかどうだか覚えていない」。常に、この人の頭の中には、もっとも新しい勝利への渇望しかない。
怒濤の好発進には、本人ならずとも、周囲の期待は自ずと高まる。「ぜひ4日間、続けて欲しい」とのメッセージを寄せたのは青木。直道は「今のジャンボは、ティショットも安定しており、崩れる気配がない。・・・行くんじゃないの!?」。
もちろん本人も、その気満々。「言っただろう? 今年は話題を提供するって!!」。そういえば、開幕戦からこの人は言っていた。さっそく、それから2戦目の有言実行。「やるのは今でしょ!」と、いまお気に入りの流行りのフレーズに、自身が持つ55歳と241日を破る最年長V記録への、押さえきれない闘志を込めた。
<参考>海外ツアーのエージシュートは
・米ツアーでは1979年に当時67歳のサム・スニードが初めて達成。「クアテッド・シティーズオープン」の2Rは67。さらに最終日には66をマークした。
・そのほかアーノルド・パーマ−が、71歳の2001年に「ボブ・ホープクライスラークラシック」で4日目に71をマーク。
・欧州ツアーでは、2008年に豪州との共催で行われた「ニュージーランドオープン」で、当時71歳のボブ・チャールズが、2日目から68、71、70と、3日連続で達成。また彼が、世界の主なレギュラーツアーとしては、最年長の予選通過記録保持者。最終順位は23位タイだった。