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日本オープンゴルフ選手権競技 2015
選手会長がアダムとの2日間を終えて
本人にも自覚があって、水曜日の練習日は「どんよりしてたね」と、苦笑した。
「トータルすれば、調子はいいんだ」。先週まで4試合連続のトップ10入りに「ずっと上位にはいられるわけだし。今週だって、上位にはいけるんだろうな」。そんな感触があってもいつものように、威勢の良い言葉が出てこないのは、やはりここ数週間。「ずっと負け続けてるんだもん」。慎重にもなる。「やってみてどうかな、と。やってみて、昨日今日で68、68と。ここまでやってけたんだから、よし、もうちょっとやってやろうかな、となる」。
気力も小出しに、徐々にモチベーションを上げていく。
3位タイで決勝ラウンドを迎えれば「次第に脂も、気持ちも乗ってくる」。
アダムと過ごしたこの2日間は、ギャラリーになりきった。
「気持ちいいやね。凄い飛ぶなーって、ずっと見ていた」。
前半の18番のティグラウンドでは思わず、吹き出した。笑うしかないほど、本当にアダムはよく飛ばす。「化け物みたいだね」と、呆れてしばらく笑い続けた。
以前、欧州とアジアの対抗戦「ザ・ロイヤルトロフィ」で、池田のこんなつぶやきを聞いたことがある。小高くなったティグラウンドに上がるときに欧州の選手が、長身でこともなげにひょいとまたいで、つい池田もつられそうになったときに、段差で躊躇した。「俺には無理だ。足が短けーんだから」と、自嘲の笑みで、ぐるっと遠回りしてティに上がった。
アダムを見るときの視線もそうだが「俺とあいつらとは別物だ」。苦笑いで付け加えて「俺は顔もでかいしね」と、いやいやそこは、アダムの顔が小さすぎるのだが、それで別段、コンプレックスを感じるというのでもなく、または対抗して無理に体を鍛え出すというのも池田にはない。「もちろん、なんか真似できるようなものが、あったらいいなあって思いながらは見ているよ。でも真似しようたって、真似できるようなものはなかった。あれに真っ向勝負したらがちゃがちゃになる」。
しかし、完全に高見の見物を決め込んでいるのでもなかった。
「そんな彼にも何かで食い下がっていこうって気持ちがあった」。
アダムが感心して言った。
「池田選手は、グリーンを外しても、いいところにつけてくるしパットもいいね」。
アダムのように、パー4のワンオン狙いや、パー5で乗せてイーグルトライというのはない。それでもグリーン上で伸び悩むアダムを横目に、池田は天性の小技でどこからでも寄せて、しぶとくチャンスを作った。
最後の9番は、左のラフからグリーンをとらえきれずに、4メートルの下りのスネークラインもしのいだ。本人も「あれは、大きかったね」とうなずいた。アダムに飛距離では負けても、キレのよいアイアンショットで距離の長い4つのパー3のうち、3つのバーディで、精度の高さも示してみせた。
「池田選手は自分のゲームをコントロールできている。追いかけるのは難しい」と、池田とは4打差の7位タイにつけたアダム。
「池田選手はグレートプレーヤー」とも。
しかし「それはたまたまこの2日間、俺のほうが成績が良かったからでしょ」と本人は素っ気なく「ゲームだって、組み立てているわけではなく、たまたま組立ってるだけ。
週末もノープラン。筋書きを描いたって、描いたとおりにいくわけないんだから。今日の池田勇太君はどんなゴルフをするのかなって、客観的に見ている方が気楽にやれる」。アダムと離れた週末は、自分のギャラリーをする。