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トップ杯東海クラシック 2015
金享成(キムヒョンソン)が三好にリベンジ
だから緊張もなかった。72ホール目の18番も、右の池のすぐそばに立つピンに向かって迷わず打った。6番アイアンを握った181ヤードの2打目を奥から下りの1メートルにつけた。スライスを読み切って、土壇場で追いついたら急に足が震えてきた。
「もしかしたら勝てるかも」とはいっても、相手は2つ後ろの組の片山晋呉。過去5度の賞金王では強すぎる。「ボギーを打ってくれないかな・・・」。つい、相手のミスをつい願ってしまった自分を責めた。「ごめんなさい」と心で詫びて「優勝は神様が決めること」。腹をくくった。気持ちを入れ替え、再びサドンデスの18番ホールに向かった。
昨年の三好は、一時は5打差の独走態勢を築くも後半は12番でOBを打つなど、5連続ボギーと、信じられないような崩れ方をして、後輩のS・H・キムに初優勝を献上した。あのときはひどい風邪をひき、万全の状態ではなかった。
そして今年も木曜日の朝に寝違いをして、「ホテルでも、マイ枕で寝ているのに何でかな?」。ぴくりとも曲がらずに、よほど棄権しようかと、その矢先にインスタートの10番で思いがけずバーディを奪って「あともう1ホール頑張ろうと思った」。本当にすごく首が痛いのに、「ばんばんパットが入るんです。なんでかな?」。あと1ホール、もうあと1ホール・・・と行くうちに、トレーナーの齊田顕経(さいたたかのり)さんの献身治療の甲斐もあり、V争いにこぎ着けた。あれよとプレーオフに臨んだ。
1ホール目は、ミスが立て続いて、ラフを渡り歩いて万事休すか。今年は片山に、大会2勝目を譲るのか。左のラフから63ヤードの3打目を、辛くも2メートルに寄せてせめて「あともう1ホール、チャンスが欲しい」。ここまで来てボギーを打てば、すべてが無だと渾身のパーを拾った。首をつないだ。改めてこの日3度目の18番は、最後も池のすぐそばのピンに向かって迷わず攻めた。215ヤードの2打目は、21度のユーティリティアイアンで、右1.5メートルにつけた。三好の神様が微笑んだ。この上なくドラマチックに、昨年のリベンジを達成した。
今年は、アメリカ対国際連合の伝統の一戦「プレジデンツカップ」が、韓国で開催されることを受けて、享成(ヒョンソン)にはひとつ大きな目標があった。ホームでぜひ、代表入りを果たしたい。そのために、まずは日本ツアーで今季1勝をと意気込むほどに、空回りをした。
ついに、目標を果たせないまま開催は次週に迫り、代表からももれてやっとひとつ吹っ切れた。「出たい出たいと思っていたときは、自分のゴルフではなかった」。本来の伸びやかさが戻ってきた。お得意のフレーズも、久しぶりに飛び出した。
「ハンパない嬉しさ!!」。
昨年の中日クラウンズに続くツアー通算4勝目は、大好きな名古屋での連勝に今週、食べた名古屋メシが口福な記憶とともによみがえる。先輩のI・J・ジャンと夜な夜なハシゴで「ひつまぶしも食べましたし、コーチンも美味しかったし、名古屋の人たちも優しくて大好きです」と、熱狂的な地元ファンをも好物と一緒に並べて喜びを噛みしめた。
目下、後輩の金庚泰 (キムキョンテ)が独走する賞金レースに自分もようやく名乗りをあげて、35歳も張り切った。「韓国でもなったことがないので、賞金王が目標です」。ここから一気に、遅れた分を取り戻す。