Tournament article
ANAオープン 2016
飛べ・・・アトム!
9番では、この日最大のピンチも切り抜けた。フェアウェイから左に引っかけた2打目はキックが悪く、左の傾斜に転がり落ちた。土の上から打ったアプローチも失敗。グリーンに届かず、4打目も2.5メートルが残ったが、これを沈めた。
「流れを止めずに済んだ」と、後半も4つのバーディを積み上げて、ボギーなしの64で重永亜斗夢が、2位タイにつけた。
2014年の初シードから「パットも、ショットの精度も年々よくなっている」と、今年はすでに2200万円超を稼いで、賞金ランクは目下22位。
「あと優勝するために、必要なのはアプローチ。あまりに下手くそなので・・・」。苦手分野で損する場面も多く、今週はプロアマ戦のスタート前に、丸山茂樹に「教えてください!」。
「俺だって、ダフったりトップしたり。寄らないこともあるよ」と苦笑いで言われて「僕には丸山さんは、入りかけるイメージしかありません!」。その秘技を、なんとしても手に入れたかった。
「それをしたら、優勝もできるのかな、って」。
さっそくその翌日に、チャンスを引き寄せることが出来た。
5番では、右手前のラフから20ヤードが入りかけ。
「振り幅を決めて体感を作って、ここに打つと決める」。丸山から聞き出した言葉を反復して、この日の好スコアにつなげた。
2週前のフジサンケイクラシックに続いて、今週も石川遼と練習ラウンドを回った。「腰を痛めてたまたま日本にいてくれた。後輩だけど、本当ならなかなか一緒に回れない人。僕とは違い、どこでもドライバーを持つとか、攻め方は正反対でも、総合的に学ぶところはたくさんある」。
前回の北海道では日本プロで、直々に「熊本に来て欲しい」とお願いした。子どもたちが、地震の怖さを忘れるくらいに一緒に楽しい時間を過ごしてあげて欲しいと頼んだ。
「絶対に行きます、と約束してくれた。その点でも遼には凄く感謝している」。
7月の“2連戦”では連続のトップ10を果たしたが、実は北海道はあまり得意ではない。なんといっても持病の潰瘍性大腸炎にはすごく酷。
「なんでも美味しくて、食べ過ぎて、気をつけてもお腹をこわす」。
先週は、大会後も家族で山梨に残って、五合目から富士急ハイランドと富士のふもとを満喫してきた。いったん、熊本に帰って本当は
延々と陸路を辿ってここ北海道に来たかった。
本家本元は、自在に空を駆け回るが、ゴルフ界のアトムはよりによって、無類の飛行機嫌い。地に足つかない状況が、心底怖くて仕方ない。しかし、熊本から車でいったい何時間かかるのか?
背に腹はかえられず、目をつぶる思いで飛び乗ったのはもちろんANA機だ。
「世界一安全な航空会社ですから」。
信頼のおけるスポンサーの大会では、アトムも安心しきって上昇気流に乗っていける。