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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2016
朴相賢が劇的初V 大会史上初の韓国人覇者に
自身初の日本ツアー初Vで、大会に新たな歴史を刻んだ。
1打差で迎えた屈指の最終18番パー3で、右のラフからチップインバーディで、追いついた。
58度のウェッジを握りしめたピンまで9ヤードのアプローチは「10回打っても無理。100回打っても1回入るか。いっそバーディか、ボギーか」。一か八かの大勝負。
高々と打ち上げた、高難度のロブショットは大歓声と一緒に、カップに沈んだ。「胸がカっと、熱くなった」。
一瞬、我を忘れて、ガッツポーズを振り下ろした。
同じ最終組の小平と池田に、プレッシャーをかけた。
池田は4メートルの、バーディチャンスを外した。
小平はパーセーブに失敗した。
土壇場の逆転優勝で、今年53回目という大会の長い歴史に史上初の韓国人チャンピオンとして、名を載せた。
「本当に嬉しいですし、こんな大きな試合で勝てたことを誇りに思います」。
一昨年に続いてまた賞金2位に終わった韓国ツアーは、5月のメジャーの「メギュンオープン」で自身の5勝目を飾り、好調を維持しながらも3年目の日本では、なかなか勝てずにいた。
30人しか出場枠がないこのシーズン最終戦も、先週終了時の賞金ランキングは27位で滑り込み、これが3年シードの“メジャー戦”であることも、今の今まで知らずにいた。当初の予定はいったん、韓国に帰るつもりが急なスケジュール変更で、スーツケースの中身も入れ替えることすら出来なかった。
翌5日の月曜日には、都内のホテルでジャパンゴルフツアーの年間表彰が開催されるが、着ていくスーツがない。
3日の夜に、韓国からきゅうきょ奥様に持ってきてもらって本当に良かった。
「優勝しそうだから、来てもらったんじゃないですけど」。
本当に、偶然だったんですけど「1年苦労をかけた家族に良いところを見せられて良かった」。
詰めかけた9034人の大観衆とともに、イビナ夫人と3歳になるシウォンくんをほれぼれさせたVシーンは、2013年度の覇者をも悔しがらせた。
全員出席の表彰式で、「サンヒョン、チュッカハムニダ!」。韓国語で「おめでとう」と、心ニクい祝福に続いて「“宮里優作ばり”の、チップインを見せてくれましたね!」と言ったのは2013年に、やはり最終ホールで、朴とほぼ同様の場所から劇的チップインを沈めて、悲願の初優勝を飾った今年の新選手会長。「でも僕は、あのときチップインパーでしたけど」と優作。
今も語りぐさの感動シーンも、優作にはお株を奪われた気分になるほどの、今年の劇的シーンに「僕にとっても、夢のような形の優勝になりましたが、今後の成長のためにも、3年シードのことは忘れてこれからも、1打1打大事にプレーする。これから歩けなくなるまでプロで頑張り続けることが目標です」。
そんな頼もしい夫に「ご苦労様でした」と、声をかけるのが精一杯で、あとは感激で、泣きじゃくるばかりだったイビナ夫人とまだちゃんと、喜びを分かち合えていない。
「これから家族と新宿のホテルに帰って、ビールでも飲みながらゆっくりと語り合いたい」。
家族と一緒に初めて過ごす“トキョ”は、思いがけず至福の東京ナイトになった。