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日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills 2016

先週のチャレンジ優勝者! 上井邦裕が土壇場の出場権

写真右側は、いつも一緒に練習しているご近所の先輩プロ。河井博大(かわいひろお)も、師匠の芹澤信雄も、兄弟子たちも、弟子のV報告を待たずに向こうから、電話をくれた。名前の邦裕(くにひろ)からついたあだ名で「クーチャン、おめでとう!」。みんなが復活を待ちわびる、期待の選手だ。

今年のツアープレーヤーNO.1決定戦で、滑り込みの出場権を獲得した選手が2人。先週のミズノオープンで、5位タイにつけた“新顔”の高柳直人と、もうひとりは先週のチャレンジトーナメント「FIDRA Classic」の優勝者。

上井邦裕は名古屋商科時代には、池田勇太とともに、世界アマの代表に選ばれた逸材である。2005年のデビュー時には、すぐにも初Vするだろう、と言われた。
本人も、周囲の期待に応えたいと真剣だった。

「早く結果を残さなければ、と焦っていた」。優勝争いを何度も経験した。しかし勝てないままに、9年守ってきた賞金シードを失ったのは昨年。年末のファイナルQTも失敗して今年、レギュラーの舞台から姿を消した。

今大会の資格がある、チャレンジトーナメント3試合の優勝枠で出場権を獲得した今週。練習日の火曜日の夕方に行われた選手ミーティングで、今年JGTO会場に就任した青木功から、話しがあった。

「負けても楽しかったと言う選手がいるけれど、私はそういうのは腹が立つ」と言って、青木は若手選手を鼓舞したそうだ。
「前は自分もそれに、共感したと思う」。

しかし、出場権すら持たない今は、その言葉も少し、遠くに感じる。
「今、自分は“違うところ”にいるから・・・」。チャレンジトーナメントを主戦場にしている自分が、やたらと上昇志向を口にしたりするのは、逆に現実逃避のようで、違和感がある。

「それよりも今はまず、自分が出来ることを精一杯やるしかないんだな、と」。現にデビュー時から2年と少しを過ごしたチャレンジトーナメントも、久しぶりに戻ってみると、勝手が全然違っている。

「4人一組で回るとか、ハウスキャディさんで、クラブも自分で取りに行ったり何でも自分でやらなくちゃいけない環境に慣れなくて、一杯一杯」。
これまでに、地区オープンなどで4勝の経験はあるが、ツアーが管轄するトーナメントで優勝は初めて。

「やっぱり勝つって、どこでも大変だ、と」。改めてこの世界で生きていくことの厳しさを痛感したばかりだ。
今週は、本人にも思いがけず獲得した出場権。
シード落ちを喫した今年は、年頭からやたらと仕事が舞い込むようになったのはよいが、「なぜか女子プロのコンペが多くて」。
今週は、5月30日に茨城県の石岡ゴルフ倶楽部で行われた「栄和リサイクル スナッグゴルフ・熊本地震復興プロアマチャリティーコンペ」に参加したあと、当初の予定は名古屋に帰る予定だった。

これまた、女子プロのコンペで「自分は出場するんではなくて、スタート前のレッスン会と、プロアマ戦後の表彰式に参加して欲しいと。この前なんか、コンペの余興のドラコンに出てくれとか。そんなんばっかりで」。

しかし、急きょ今週の出場が決まった今回ばかりは、せっかくのご依頼も“ドタキャン”を申し出るしかなく、願ったりの予定変更も冷静だ。
今週の会場となる宍戸カントリークラブには、苦手意識しかない。
「昨日も練習ラウンドを回ってて、気持ち良く打てるホールがひとつもなかった。まあ、調子は悪くないし、ボチボチ行きます」。
周囲の期待を背に、今季4戦目もマイペースでやるつもりだ。

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