人間関係と同じで、選手とキャディにも当然、相性というものがある。そして、選手によって、キャディという仕事に求めるものも違う。キャディさんには、一から十までお世話をして欲しい選手。番手選びや距離は自分で決めるけれども、風の方向だけは、読んで欲しいという選手。中には、ただバッグを運んでくれればいいという選手もいる。

では賞金王は、キャディに何を求めているか。
「僕は、こちららが聞いたときに、キャディさんには的確な答えをくれること」。それと、心を和ます楽しい会話だ。それも、ただやみくもに面白ければいいというわけではない。金庚泰 (キムキョンテ)が欲しいのは、こちらの心の機会を読んで本当に必要なときに、心がほぐれる話しをしてくれること。
その点で、昨季からバッグを担ぐ島中大輔さんは、「僕にとても合っている」という。

「別に言わなくてもいいときに、言わなくてもいいことを言う人がときどきいるけれど。島中さんは僕の様子を見てて、非常に良いタイミングで笑わせてくれる。凄く安心感がある」。
相性の良さは、結果が物語っている。
昨季11月のマイナビＡＢＣチャンピオンシップから数えて、3勝はすべて島中さんとのコンビで勝ち取ったものだ。
そしてまた今週も、このコンビで優勝争いを繰り広げている。

相変わらず鬼の強さもこの日3日目は、後半からほころびが出ていた。12番で左にひっかけてラフに入れた。2打目はもっと、打ち込むべきだった。「思ったよりも深かった」と、出すだけのショットになった。ダブルボギーを打って、終盤はついにヘンドリーに並ばれた。

晴れた日は、いつもサングラス姿の庚泰 (キョンテ)。この日は曇天模様に、裸眼でプレーをしたが、途中から視界が白くぼやけてみえていた。「疲れているからかもしれない･･･」。5年前からたまに出る症状といい、特にアドレス時に自分とボールとの距離感が曖昧になる。

その弊害がもっとも出たのが17番だった。左足下がりのバンカーから地面を這うように飛んだ球は、手前のアゴにぶち当たり、どうにか脱出できただけだった。
土壇場の大ピンチにも、かたわらの島中さんはのんびりと言った。
「今日はまだ3日目。あまり考えすぎずにやりましょう」。3打目はピンそばに寄った。パーで切り抜け、首位を死守した。
「目がこういう状態の中で、今日はよく頑張れたと思う」と、鬼は珍しく自分を褒めた。「今日は1日休んで、明日また1日。一応、まだチャンスあるから」。いやいや、チャンスは大ありだ。

• 金 庚泰