Tournament article
HONMA TOURWORLD CUP 2017
ジャンボ尾崎が日本ツアー史上2度目のエージシュートを達成
外野からでもそうと分かるのだから、同組で回っている選手たちにはなおさらだった。
伊澤利光は、にわかに増えだした報道陣にふと気がついた。「そういえば・・・」。大記録がかかっていると思えば、真剣なまなざしにも納得だった。やはり同組の宮瀬博文も「気力が凄い」とその心中を察した。
スタートから2つボギーが先行しながら4番で、フェアウェイから奥80センチにくっつけてバーディを奪い返した。8番ではラフから絶妙な寄せでイーブンパーに戻すと、11番では2メートルのチャンスを決めた。
アンダーパーにした瞬間に、ますます増していく凄み。
「1打1打に集中して、特に後半は凄くクラブが振れていた」と感服した伊澤。宮瀬も「70歳で、あれは出来ない」と、その気迫に打たれた2人はいつしか、あえてジャンボに話しかけなくなった。
誰もがその瞬間を、息をつめて見守った。
14番で2.5メートル。15番は下から2メートルを逃した。さらにスコアを縮める再三のチャンスを外して迎えた16番では下りの1メートルが残った。
「外さないでくれよ」と、伊澤も我ごとのように思わず祈ったパーパットをしのいで迎えた18番では午後からコースに出る選手たちが、自身のスタート時間ぎりぎりまで、その勇姿をじっと見つめていた。
ジャンボ尾崎が3バーディ、2ボギーの「70」で回って2013年のつるやオープンに続く、日本ツアー史上2度目のエージシュートを達成した。
「おめでとうございます!」と、池田ら若い選手たちに迎え入れられ「70を出しておめでとうって言われても・・・」と、照れた。
「1日で10アンダー出る選手がいるんだから。俺のプライドとしてはどうかな」と強がっても、笑顔には深い喜びが伺えた。
「レギュラーツアーで戦うにおいては、飛距離はどうしても必要なもの。自分で追求してやろうとは思うが伸びる分野と落ちる分野もこの歳では落ちるほうが多いが、いかに落ちる分野を少なくしてやれるか」。
今だ極限までムチ打って、重ねる努力は底なしだ。
この日もスタート直前まで微調整を重ねたこだわりのドライバーで、46歳の宮瀬を何度も超えた。
「昨日よりも高い弾道で距離も出た。ティショットはここ4,5年で、一番良かった。特に後半の内容は、全盛期を彷彿させるものだった」と自ら言い切る手応えで、宮瀬と伊澤にもカツを入れた。
「2人ともいいプレーヤーだけど、肝心なところで簡単にバーディを獲ることができない」。前半8番のバーディから、最後までティショットで一番手を打ち「オナーが長すぎて、疲れ切っちゃったよ」とわざと嫌みったらしく、50代目前に復活を模索する同組の2人にも奮起を促した。
前回は、2日目に暫定首位の決勝進出という偉業もついたが、以来4年ぶりの予選突破とはならなくても「元気な姿を見せるというのは大事なこと。今は男子ツアーが低迷しているし、少しでも話題を提供できたのは良かった」と言った70歳の背中に充実感が漂った。
朗報を聞いたJGTO会長もその思いをくみ取った。「トーナメントでエージシュートを出す大変さは、その歳になった本人しか分からない」と、会場にメッセージを寄せた青木功。
「これでまた、現役生活が伸びる可能性を示してくれた」と、その偉業をたたえた。
「大勢のジャンボファンが待ち望んでいたと思う」と、喜んだ。
「次は、もうひとつ上の話題を提供できるように頑張るよ」とジャンボ。永遠のライバルからの祝福と期待にも応えた。