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アジアパシフィックオープンゴルフチャンピオンシップ ダイヤモンドカップゴルフ 2018

単独2位の池田勇太は、伝えたいことがある

前夜から絶え間なく雨が降り続く悪条件で、66を出した。「今日はすごく充実した内容だった」。前半の3番で、さっそく迎えた6メートルのバーディトライを沈めて弾みをつけた。
「ミスをしたのはボギーを打った9番くらい」。
しかしそれも、折り返してすぐの10番で、右から4メートルのチャンスを沈めて、流れを切らさなかった。
深いラフに挟まれたコースでこんな日にこそ、フェアウェイキープに徹するのは当然のこととして、「厳しい状況にあるときに、チャンスを待って、どうやってパーを拾っていくか。その時の自分の考えであったり、頭の中を、ぱっぱと整理できないと、こういうコンディションで良いスコアを出すことは出来ない」。

3打目をバンカーに入れた11番は、絶妙の寄せワンで魅せた。
次の12番では、右の林の中の2打目を低い球でグリーン奥まで持ってきた。
立て続けのスーパーパーセーブに「こういうのが出来ないと、こういう内容にはならない」と、胸を張った。
「私の場合、どの試合でもあくまで狙うのは優勝だけですので」。
2日目にして、節目の20勝を射程に入れた。

先週は、大好きな輪厚で連覇による大会3勝目を狙うはずだった。
しかし、今月6日に起きた北海道胆振(いぶり)東部地震により、ANAオープンは中止。
「残念・・・。もちろん、残念なんだけど。残念って言っていいのだろうか?」。
主催者、関係者、コース、そして愛する北海道の人々がおかれた状況を考えれば、「残念」などという言葉ではとても片付けられない。

先週、日曜日にきゅうきょ、日帰りで被災地に入ったが「あの状況で、万が一開催をされたとしても、選手は誰一人プレーが出来なかったんじゃないかと思う」。
液状化により陥没した清田区の住宅街は、コースから車でわずか10分ほどの場所にあるという。
「本当に、無残な姿を見てきた。あの状況で、そういう近くで平気な顔で、プレーをするやつがいたらそれは、ちょっと俺には考えられない。俺が、逆の立場だったらどう思うか」。

実際に、現場を見てきたからこそ「主催者の判断は早くて素晴らしかったと思うし、僕らも助けてもらった。残念とかそいういうことではなくて、起きてしまったことは起きてしまったことで、僕らはプロゴルファーとして、スポーツマンとして、何をしなければならないか」。

さっそく、行動に移したのが先週日曜日に、石川と二元中継でつないだ、ANAオープンの特別番組だった。
輪厚に入った池田のリポートを、石川が東京のスタジオで受ける形に、「なんで遼は(北海道に)行ってないんだと言った人がいたそうだがそれは違う。もともと自分と遼が、何かしらのことができないかと二人で行く予定にしていた」と池田は説明を始めた。

「でもまだまだ余震が続く中で、万が一交通手段が途切れた場合、どうするか?」。
まず今週のこの「アジアパシフィック ダイヤモンドカップ」のプロアマ戦は、火曜日に予定されており、石川は選手会長の立場でこちらにも穴を開けるわけにはいかない。

「今週の主催者のみなさんにも迷惑をかけるわけにはいかない。何かあったときに、2人とも巻き込まれては、話にならない。それで、遼は東京に残そうと」。
きゅうきょ放映が決定した生番組は先週、今週の両主催者やテレビ局、関係者のみなさんとの限られた時間と折衝の中で、各方面に及ぼす影響が出来るだけ最小限になるよう想定しながら、ギリギリの判断で下されたことだった。
「だから本当は遼も、北海道に行くと明言していたことを、皆さんから伝えていただけるとありがたい」。
単独2位の会見のほとんどの時間を割いて、報道陣に頭を下げた池田である。

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