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フジサンケイクラシック 2020

8か月ぶりの再開初戦は、2年ぶりの復帰初戦。42歳、高山忠洋の思い

ツアーって、やっぱりいい©JGTOimages
8か月ぶりの再開初戦は、丸2年ぶりの復帰初戦となった。42歳が喜びをかみしめた。
「ゴルフができるだけで幸せです」。

ツアー最長の全長7500ヤードは、確かに公傷明けにはきつかった。
「雨が降ると、途端に難しくなる。風も意外と舞ったので、4日分疲れました」と、吐き出すため息にも、笑顔が混じる。

ツアー5勝の高山忠洋が、戦線を離れたのは18年夏。
試合中に、右目に違和感を覚えた。
「グリーンがゆがんで見えて、逆目が順目に見えたり、焦点が合わない」。
這いつくばるようにして、ラインを読んだ。
症状が進むと、コースメモも正しく見えなくなっていた。

「中心性漿液(しょうえき)性脈絡網膜症」との難読な病名には「運動禁止」のドクターストップがかかった。
同年末に手術を受けて、半年は安静。
やっとトレーニングや、打ち込みは開始できても、完治までにさらに半年。
 
ようやく復帰のめどがついたのは、やっと今年1月だった。
4月の国内開幕戦「東建ホームメイトカップ」からツアー中のケガを公傷とみなす特別保証制度を利用して、リスタートするはずだった。

だが、あれよとコロナ禍に。
試合は次々と中止になった。

「誰を責めることもできない。仕方ない。でもトレーニングか、ゴルフの練習か。どちらを優先したらいいか…」。
長いブランクを経た復活の身で、いつ始まるかも知れないツアー再開を待つ日はつらかった。

「落ちてしまった筋力を取り戻そうと、焦って、肉離れを起こして、それでまた、しばらく動けなくなったり…」。
不安と葛藤を繰り返して、ようやくこの日を迎えた。

丸2年ぶりに戻ってきた男子ゴルフは「浦島太郎のようだ」と笑う。
層はすっかり若返り、星野英正や、矢野東ら同期で活躍した選手たちがいない。
「みんな、苦しんでいる」。
抗えない時の流れの中で、それでも再び舞台に立つことができた。

大会初日の1オーバーには「16番(パー3)で力んで池に入れたり、けっこう大きなミスもあった」と、反省もまた楽しい。
「こういう難しいコースほど、やりがいがある。プレーできることに、喜びがある。ツアーって、やっぱり最高です」。

マス目状の対象物は今だ、ゆがんで見える。
術後の後遺症は残るが、今季出場できるのはわずか9試合。
限られた中で、シード権の保持を目指すには、1試合も無駄にできない状況だが「こんな大変な中でも、大会を開催してくださった。活躍の場を作ってくださった主催者のみなさんに、感謝しながら回りたい」。
ベテランの思いは清くまっすぐだ。
  • 2年ぶりの復帰を支えてくれるのは剱持直也キャディ。ツアー5勝のうち、3勝を支えてくれた良き相棒。今は会社員として働くが、再三のオファーで今大会限りのタッグが実現

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