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ブリヂストンオープンゴルフトーナメント 2021
スギちゃんの恩返し三連発。杉山知靖が感謝と敬意の初優勝
杉山知靖(すぎやま・ともやす)は謹んで水を浴び「自分ひとりの力ではない。ここまで応援してくださった皆さまへ感謝の気持ちでいっぱい」。
一騎打ちを演じた5つ下の片岡尚之にも「いいショット、パットで素晴らしい展開を作ってくれた。それに乗じて流れにのれた」と、感謝。
6番のボギーで並ばれたときでも「ナイスバーディ!」と、大きな声が出た。
「年下の選手にも気持ちよく回ってほしい。組全体をいい雰囲気に」と、マナーも心配りも完璧だった。
初出場の大会で、初の単独首位から、最終日を出た。
「プレッシャーはあった」とは言ったがスタートの1番で、いきなり4メートルのパーパットをしのいだ場面も「迷わずに自分のストロークに集中するだけ。入る入らないはゴルフの神様次第」と、達観していた。
中盤の大接戦も、「スタートする前からピン位置を逆算して組み立てていく」と、ゲームプランも綿密だった。
後半14番で再び並ばれても「次の15番で取れれば、次の16番は持ち球のドローで攻めやすく、流れは作れる」と、計算。
「終盤になるとどのラインが気持ちよく打てるのか、なんとなくわかってくる。今日はフックラインが入っていた」と、15番は5Wの第1打から、PWへとつないだ残り126ヤードの2打目を、ピン奥2.5メートルのフックラインにピタリ。
狙い通りに16番の連続バーディへとつなげた。
スタートの3差を守って通算19アンダーで逃げ切った。
祖母の手ほどきで5歳からゴルフを始め、母親の智恵さんに女手一つで支えられた。
「朝起きたら朝食が作られていて、もう家にいなくて。学校から帰っても、まだいない。こんなに働かせていいんだろうか」。
子どもながらの心痛は、特待生で高校、大学に進学するまで続いた。
「何不自由なくゴルフをさせてくれた母親に、心から感謝したい」と、優勝賞金2200万円はそっくりそのまま渡すという。
予選落ちが続いて悩んでいたこの夏。
「存分にコースを使っていいから。スギちゃん頑張って」と、励ましてくださった所属先レイクウッドゴルフクラブのみなさん。
「真夏でも、寒い冬でも変わらずコースをきれいにしてくださっている。その方たちからお言葉をいただきプロゴルファー冥利に尽きる。スイッチが入った」。
7月のAbemaTVツアー「プレーヤーズチャンピオンシップ・チャレンジ」のプロ初優勝から三月とおかずにレギュラー初優勝で、2週後に迫る日米共催「ZOZOチャンピオンシップ」の出場権も獲得。
いつも律儀なスギちゃんの恩返し3連発。
ほかにも、前夜はラインがパンクするほど届いた応援メッセージや、「明日18番で待ってるよ」と、約束通りに来てくれた親友の稲森佑貴(いなもり・ゆうき)にも、6年連続フェアウェイキープ1位の極意を教わったと会見で大感謝。
そして、最後に敬礼。
松山英樹は地元神奈川県から越境した高知の明徳義塾高校で2学年先輩だった。
「日本の誇り。雲の上の人。なかなか直接お会いできる方ではないので。マスターズおめでとうございますとか、何かお話できたらいい」と、今からそわそわ。
「偉大な先輩と、同じ舞台に立てるだけでも光栄に思います」。
直立不動でゾゾっと対面する。