弟弟子が、兄弟子を気遣う。
心配そうに宮本勝昌が尋ねる。
「大丈夫なんですか…?」。
藤田寛之が、首をかしげて苦笑する。
「宮本と一緒にこの大会に出られるのもいつまでか」。
大会の地元御殿場市が生んだ偉大な師匠、芹澤信雄が率いるチームを脇で支える2人の愛弟子。
芹澤を慕って、揃って静岡県に移住。
以来、芹澤を筆頭に、ご当地プロとして今大会を盛り上げてきたが、芹澤が19年大会を最後に出場リストから退くと、今年は藤田が「ゴルフ人生最大」というスランプに陥り賞金ランキングはまだボーダー線上の66位。
「宮本がシニアに来るまでは」とレギュラーツアーで第一線を続けて続けてきたが、いよいよ来季、宮本がシニア入りを控える直前に、存続の危機を迎えている。
万一の場合も、1シーズンに限って適用できる「生涯獲得賞金25位内」という切り札はあるが「賞金シードはプロの勲章」。
こだわり半分。
反面、諦め半分。
「この歳で、ここまでやっている人はいない。もう十分頑張ったんじゃないか」。
永久シードの片山晋呉と共に、現役選手としては最長の24年連続シード権への情熱が、別の思いに転じている自分も感じている。
「ただ、今週も精一杯、こつこつとやるだけ」。
プロアマ戦を戦い終えると、軽く調整を済ませて2人で、コースから車で10分ほどの師匠宅へ。
この日10日は芹澤の62歳の誕生日。
毎年、この大会で若い弟子らを連れて、手に抱えきれないほどのプレゼントを届けたが、昨年から丁重に辞退されたという。
「今年はせめてお祝いの気持ちを伝えに」と、宮本。
「芹澤さんの声は神の声」と、スイングやゴルフに迷った時は、いつも飛んで行き、相談を仰いできた。
今年は春に2位を続けるなど序盤に好調を続けて、賞金ランキングは31位につけるが「最近は予選を通過するのもやっと」。
本戦を前に、師匠の顔を見れば師匠の顔を見れば何かまた、良いひらめきを得られるかもしれない。
ここ御殿場市に越してきてからは、芹澤と共に市の観光親善大使に選ばれ、地域にも貢献してきた。
「今年、大会は2年ぶりにお客さんにも入っていただけるので。アウトレットに来方々、ぜひ週末の僕らのプレーも見にきていただければ」。
ぜひ上位での決勝ラウンド進出で、地元ファンの集客にもつとめる。