顔で笑って…
次週のシーズン最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」はシーズン優勝者など、30人の出場枠しかないため上位65人の賞金シードを争う選手たちにとっては、今週が事実上の最終戦である。
賞金ランキングの76位から、2シーズンぶりのシード復活を目指す53歳の手嶋多一が、「膝から崩れ落ちた」というのが先週の「ダンロップフェニックス」である。
大会初日に4アンダーで上がったが、15番ホールで「5」のところを「4」と記入するスコア誤記で失格。
実は、前年の同大会でも同様のミスで失格しており、「それがあったので、自分でもちゃんと見て、最後まで残って確認して、大丈夫ね、って言ってあれだったので…。いいゴルフをしていたし、狐につままれたみたいでびっくりしました」と、好位置で出ながら、1円も上乗せできずに終わったショックは計り知れない。
手嶋が22年間守り続けてきた賞金シードを手放したのは18年だが、翌19年は2014年の日本プロで得た5年シードがまだ1年残っていたし、さらに今シーズンは、生涯獲得賞金25位内の資格を公使できたが、来季はついにそれすら尽きる。
プロ24年で今まで失格などしたことがなかった手嶋が、年に数度もスコアミスを犯すなど、ついに出場資格を失うかもしれないという精神的プレッシャーが与える影響は、どんなベテランでもやはり大きいと言える。
レギュラーツアーとシニアを掛け持つ今季、「日本シニアオープン」で5打差の圧勝。2001年の「日本オープン」と合わせて両ナショナルオープン制覇は、青木功と中嶋常幸と谷口徹に次ぐ、史上4人目の快挙だった。
レギュラー選手より多く試合をこなすといわれるベテランは、「どこも痛くないのでありがたい。胸が痛いだけです」と、わざと明るく冗談めかした。
ボーダーラインの65位につける小鯛竜也との賞金差は329万5699円。
単純計算で今週は、単独12位(333万円)以上の成績が必要だが「気持ちはもう”トム・ワトソン”に行ってます」と、冗談交じりに言うのは、来季の出場権をかけたファイナルQTが行われる会場の「トム・ワトソンゴルフコース」のこと。
先週の会場の宮崎県「フェニックスカントリークラブ」と併設コースでもあり、先週月曜日には、ちょっと気の早い下見ラウンドも済ませてある。
2007年大会では、欧州ツアーでシード落ちを喫し、消沈の帰国直後に優勝。
「前はそういうのもできましたけど、今はそういう”あれ”もないので…」と、苦笑し「50歳を超えてレギュラーでやるっていうのは厳しいということ。今週は少しでも上位に入って予選会(QT)へ」と、53歳が懸命に気を張った。