アニキと紅葉
何度もいうが面倒見の良さは、ツアーでも随一だ。
今季最後の1日に、日ごろの行いを生かせるか。
43歳の谷原秀人が3日目に「64」。通算11アンダーで、2位と1差の単独首位に立った。
試行錯誤のショットの調子が、ついにこの日は「イマイチから普通ぐらい。日に日に、良くなってきた」と、復調に合わせてチャンスにビタビタつけた。
得意のパットで次々沈めて6バーディ、ボギーなし。
17ー19年の欧州ツアーから戻った今季。
今年11月の「三井住友VISA太平洋マスターズ」で5年ぶりのツアー通算15勝目を飾り、3年ぶりに出場を果たしたこのシーズン最終戦。
「13回出させていただいて、一度も勝ってない。自分の中で悔しいのはあります」。
トップ10は7回。
大会での最終日最終組は2度。
うち1回は、大会自己ベストの2位に入った昨年。
この日スタート前に、互いにグータッチをして出た岩田寛と当時、一緒に回って共に最終ホールのボギーで、1差の2位タイに敗れた。
「今朝、練習場でね…。あれは、励まし合ったのかな?」と大学で2つ後輩の本意を想像して「そういう風には捉えてなかったけど」と、苦笑した。
もう1回は2013年。
やはり大学2個下の宮里優作が、最終ホールのチップインで大量の涙を流した年。
谷原は、4差の3位に敗れている。
「覚えてますよ。優作の初優勝。運もあり、運がなかったら、勝てなかったというのは大いにあった。あの時は、優作に運が向いていた。日頃の行いが良かったんじゃないですか?」と、回想した。
すり鉢状のグリーンは、さながら自然が作るスタジアムのよう。ドラマ仕立ての最終18番パー3で、数々の感動ドラマを散々見て、数々の悔しい思いを散々重ねてきたが、過去は振り返らない。
「考えるのはゴルフとか、スイングのことだけで、なんであのとき負けたか。あのショットが悪かったとか、あのパットが入らないから負けたとか、なんであんなミスしたのかとか。考えるのは、そのくらいのことしかない」。
はたから見れば、昨年大会ほか数々の雪辱戦のようだが谷原にとってはただ目の前に、もっとも新しい勝利の可能性がある、ということだけ。
「今年の最後の締めくくりとして明日は最低アンダーパーで回りたい。目標としては、優勝」。
今季最強選手の初タイトルを目指す。
今度こそ谷原も、日ごろの行いに救われるか。