おめでとう!!
木下稜介が26位タイに終わり、稲森佑貴は8位タイに終わった。
最終日を4打差の4位タイから出た星野陸也は6位と崩れ、最後まで粘った金谷拓実も、大会3位にとどまった。
「メンタルが影響し、今週は全然いいプレーができなかった」と、通算2オーバーの22位タイで終わったチャン・キムは、「ほかの選手が気になって仕方なかった」。
それでいて、18番グリーンの戦況を直視する勇気もなく、クラブハウス周辺をうろうろしているうちに、周囲の空気が自然とお祝いムードになった。
「これで、やっと休める」と、緊張の糸がやっとほぐれた。
出口キャディもおめでとうございます
シーズン最終戦で、可能性を残していたほかの4人がみな及ばず、連覇による賞金王、とはいかなかったが金谷に779万6198円で逃げ切ることはできた。
「これまで2度チャンスがありましたが、今年ようやく賞金王になれたことに、ほっとしています」と表彰式で、記念撮影の順番を待つ間も嬉しくて、恒例の賞金ボードを子どもみたいに頭に乗せたり、小脇に抱えてエアギターみたいに飛び跳ねたり、188センチの長身をいっぱい使って喜びを表現。
ホワホワ、ニヤけっぱなしだった。
16、17年と19年で1位を続けた持ち味の飛距離は今季、幡地隆寛(はたぢ・たかひろ)に譲ったが「今は飛ばすより、安定性を求めている」。
代わりに、師匠のデービッド・イシイ以来となる、史上2人目の米国人キングの称号をつかんだ。
「最初にハワイでゴルフを教わった時に、デービッドに日本からプロのキャリアを始めてみたら、と言われたことがあるんです。彼に次ぐ賞金王になれたことには、特別な思いがあります」と、感謝。
晴れの舞台にご両親は、来られなかったが会見中もそわそわと「今も電話が入っていると思う。このあとすぐ電話をしたい」。
母国のお祝いムードが目に浮かぶ。
コロナ禍で2年がかりのシーズンは、渡航制限で日本に来ることすら困難な状況で、いち早く戻ってきた海外勢の一人がチャン・キムだった。
昨年の再開3戦目の「三井住友VISA太平洋マスターズ」から合流すると4位、5位タイ、そして昨年の今大会で通算5勝目。そして今年は、海外メジャーを挟みながらさらに2勝を重ねて、総額1億2759万9803円で悲願の初戴冠にこぎつけた。
本格参戦3年目の2017年から、ケガで1年離脱した18年を除いて、毎年レースを争ったが、もっとも肉薄した17年が、もっとも悔しかった。
終盤戦を賞金1位で来ながら、今大会も背中痛で棄権。3位に終わった。
4年前の反省から今年、夏から取り組んだ半断食ダイエットで開幕時の112キロから、95キロの減量に成功したのも大きな一因だが、こんなめでたい1日さえ、「今日も続けるつもり」と、頑固なキング。
戴冠の瞬間も、手にしていたのは、つつましく紙コップのコーヒーだった。
夜19時以降は固形物を、けっして口にしないきまりだ。
「堕落は、1回でも自分を甘やかした時点で一気に始まるものです」。
頂上に立ってもますますストイックな賞金王の誕生だ。