「見に行きたいけど人混みが苦手で…」と、前日のV会見で話していた岩田寛は、どこで母校の快挙を見届けるのか。
地元宮城の仙台育英高校に進学時は,ひょんな理由でゴルフ部に入ったが、野球は小3から始めて小学ではキャッチャー、中学ではショートを守り、3年生まで続けた。
高校時代は「クラスにも野球部の子がいっぱいいた」というが、自分はゴルフ部活動で、甲子園には応援に行けなかった。
奇しくも、岩田の今大会前回優勝時の2015年夏も、母校は決勝に進んだ。
東海大相模に10ー6で敗れたが、当時の佐藤世那・投手は「僕の家から歩いて30秒くらい。めちゃめちゃ地元の子で、凄い応援してました」という。
今年、再び7年ぶりの母校の決勝進出に歓喜したのは、単独首位に立った20日の大会3日目。
「一緒に優勝したい」との思いを原動力に、自身初の逃げきりVを達成した。
過去3勝はすべて逆転で、最終日最終組で勝ちきったのも、今回が初めてだった。
1打リードで迎えた最終日は「経験したことがない。どうなるか」。不安もあり、「2人が本当にしつこくて」と、同組の大槻と金谷の粘りに手を焼き、「やはり簡単に勝てるってない」と、ひそかに悲嘆した場面もあったが、「どうやるかより、どうしたいか。ショットも、パットも、自分がここをこうしたいからこうする、と思いながらやりました」。
自分のゴルフをやり抜いた最終日のプレーを、決勝戦前日の後輩ナインは見てくれただろうか。
「記事を見て欲しいです。監督でも、誰でもいいので。育英ナインに僕の思いが届いて欲しい」と切実に、「今まで、東北が勝ったことがない。勝てば新たな道が出来る。道が見えるのは、下の子たちにも良いこと。それを育英ができたら最高」と、祈る思いで観戦する。
初の全国制覇に挑む母校ナインに伝えたい。
「監督と、自分自身を信じてください」。
悲願達成なら、きっとヒロシも泣いてしまう。