なぜ今年から、矢野も特使に就いたのか。
「あれよあれよでなりました」と、ひょんな出会いがきっかけだ。
きっかけは、2013年。池田勇太が、史上最年少の選手会長に就任した時、新たな施策を実行したひとつが、オフにプロが、みんなで力を合わせて、スポンサーをおもてなしするコンペを主催したこと。
チームを組むスポンサーは、前夜祭でプロがくじを引いて決定された。
その時、矢野が引き当てたのが、地元のテレビ高知の役員の方々で、そこからどんどん数珠繋ぎ。
本大会のほかにも、年に数度は高知に訪れ、接待やお仕事でご縁が増えていった。
「片岡大育の次に、高知に知り合いが多いプロが僕だと思う」と、胸を張る。
「やっぱり高知はカツオのたたきとしらす。それに合う地酒なら酔鯨と司牡丹。美味いよ~」と、地元グルメも知り尽くし、年を追うごとに、その絆は深くなり、とうとう今年から観光特使の任を受け、このたびの大会出場も「本当に、たくさんの方々のご尽力がありました」。
推薦をいただき感謝に堪えない。
大会前には片岡と共に、自身の動画チャンネルで、大会をPR。その中で、片岡が2020年に戦列を離れる大きな一因ともなった原因不明の顔面神経麻痺についても深掘りし、大きな反響を呼んだ。
「アズマさんに引き出してもらいました」と、片岡。
来年2月には、矢野が着々と、片岡との高知でのジュニアイベントも計画中といい、「ほんと、矢野さんの行動力はすごいんです。頼りにしてます」。
強力な助っ人の新加入に、励まされぱなしだ。
2人とも、希少なチャンスでシード復活を目指す身。
共に次週は、QTサードを控える。
矢野は、先月のホスト大会「マイナビABCチャンピンシップ」以来、今季4戦目のツアー。
「試合自体も久しぶりだし、この1試合でどうにか…なんてそんなの、20年に1回あるかないかのドラマ、頭の片隅にもない」と、自虐を言ったが「やっぱり、応援してくださっている方々のためにも、しっかり予選を通って、ひとつでも上位に入れるように頑張ります」と恩人を思えば、自然と気合が入る。
一方、片岡はコースの所属プロとしてのつとめもある。
先月にも一度回りに来たが、いよいよ本番コースの仕上がり具合は素晴らしく、「フェアウェイの芝つきもよいし、グリーンも最高の状態。今年はそんなにスコアは出ないのではないか…」。
昨年、チャン・キムが記録したツアー最多アンダーの「32」には度肝を抜かれた。
「あれは勘弁…」と笑い、「難しいセッティングのほうがチャンスがある」と、好機をにらむ。
「ここで一発シードには 、単独3位。そこを目指しつつ、あわよくば優勝を…」。
意気込む隣には、プロより有名ともいわれるカリスマキャディ、伊能恵子さんもいてくれる。
「2人で力を合わせて、感謝の気持ちをこめてプレーします」。
2人の特使が、ゆかりの地で復活をにらむ。