大会予選を兼ねた3月の岐阜県オープンを制して本大会でデビュー戦を飾った発多は、2日目に予選通過を果たしたばかりか、日本タイトルのサンデーバックナインで3アンダーの大健闘。
イーブンパーの22位タイで大会を終えたことに、金谷は喜びと驚きを隠せないようだった。
「だってね…」と、可笑しそうに昔を思い出しながら、「アマチュア時代に、僕のキャディをしてくれたこともあるんですけど、その時はプロキャディになろうとか言ってたくらい。その彼が、まさかこんな大きな試合に出られる人になれるとは、思っていない」。
発多が、大学卒業時に受験したQTファーストで落選し、帰路の高速パーキングで「ここにキャディバッグを捨てて帰る」と、号泣するのを懸命になだめて、思いとどまらせたのも金谷だ。
「どうしようどうしよう、って。ずっと泣くので段々うざくなってきて…。じゃあ辞めたら、って」と言いたくなるのを堪えて励まし続けたのも懐かしい笑い話だ。
今オフも、金谷の実家の広島まで訪ねてきたので、レッスンしてあげたのはいいが「バンカーが出ない」と言って泣き、「トップした」と言ってはまた泣いていた困ったさんが、今週4日間のサンドセーブ率でなんと、1位に。
「いや、ほんとにうまくなったよ」と、自身は6月の「BMWゴルフツアー選手権 森ビルカップ」に続く日本タイトル連勝を逃したことも一瞬、忘れて先輩としてしみじみ。
「こんな、ロープ内でゴルフができるなんて。誰よりも自分が一番想像できていない。金谷さんのおかげです」と改まって礼を言われて、しれっと「コーチ代、よろしくね」。
慌てる発多の様子にまた、大笑い。
ビッグタイトルを逃した悔しさを、後輩の急成長が癒してくれた。