日本名なら拓也と光。
今季からきょうだい参戦を始めるのが、杉本家のエリックとスティーブだ。
お兄さんのエリックは、22年からすでにシードの常連だが、弟のスティーブは、ファイナルQT5位の資格で、今季初メンバー入り。
この開幕戦でめでたくツアートーナメントデビューを飾る。
初戦を祝して、大会前に仲良く日本式のお祝い。
弟のスティーブが小槌でコツンとしようとするたび、お兄ちゃんのエリックが捧げ持つ鏡割りの樽をひょいっとずらして意地悪。
キャッキャとしばらくきょうだいコントを堪能したあと、ようやくパッカ~ンと成功!
健闘を誓い合った。
エリックこと兄の拓也は日本で生まれたあと、家族でアメリカに渡ったが、スティーブこと弟の光は、生粋のアメリカ生まれ。
「今年の目標は、ひとつはエリックより賞金ランキング上にいるようにします」と、兄よりはちょっぴり不得手だが、家では英語禁止の家族ルールと、小学6年生まで毎土曜日に日本語学校に通ったおかげで、日常会話に不自由なし。
「まあ、こんな生意気なこという弟なんですが・・・」と、兄は兄でりゅうちょうに、「それはそれで僕は好きです。言われると自分も燃えるじゃないですか。お互いにいじって上手くなれればそれが一番かな」と、きょうだい共闘にもやる気でいっぱい。
ちなみに兄自身の目標は「自分を褒めること」と、謎めいた回答をした。
「試合に出る限りは優勝を目指すのは当たり前。それはあえて言わなくてもいいのかな」などと平素から強烈なプロ根性が、ときどきプレーの邪魔をする。
「プロとして良いショットを打つのは当たり前、という考えもあるので。そのせいで、自分へのアセスメント(=評価)が厳しくなることがある」というのが目下の悩みみたいだ。
「出来ないとなんでだろ?と、考えてはやるんですけど、その時に落ち込む量と、良いショットを打てた時に喜ぶ量のバランスを取りたいな、って。それができたら結果も全体的に良くなるのかな」と、プレー時の自己肯定が今年の課題。
今年から、弟と共にプレーができることは、兄としてももちろん誇りだ。
「QTってほんと大変なので」と、自身も予選会から勝ち上がってきた経験を踏まえて、高2で野球からゴルフに転向してから24歳で日本ツアーデビューにこぎ着けた弟を高評価。
「この1年間で凄い伸びたと思う。まだスタート地点に立っただけなんですけど、立てただけでも凄いめでたい」と、弟にはつい甘くなるけど、今年はそれもできるだけ自重するつもり。
試合がない時は、今もサンディエゴで家族と過ごす。
「弟とは6歳離れていて、人生ずっと一緒にいて、僕にとってはいつまでも子どもみたい。弟が24歳になっても守りたい、と無意識で思ってしまう」というお兄ちゃん風も今年はじっと我慢だ。
「今年は弟を構ってあげないよう努力します。現場では、普通に敵同士としてやりたい」と、あえて厳しく宣戦布告。
今年は、選手会の理事にも初就任した。
監事として、選手会の運営をしっかりと監査する立場にある。
選手たちの間でも、米国育ちのエリックのフラットで筋が通った志向や言動は一目置かれており、「僕はまだ理事1年目だし、ただ話しを聞く立ち位置ですけど、ちょこちょこと声も出したり、力になれることならなんでもやります。会長の谷原(秀人)さんや、副会長の(石川)遼さんは世界のツアーでも経験がありますので見習って、学んで、これからどうやってツアーをよくするか、一緒に考えていければ」。
きょうだい揃って存在感が増す1年となりそうだ。
★ツアーで活躍、優勝経験がある兄弟プロ
・尾崎将司、健夫、直道
・桧垣繁正、豪
・宮里聖志、優作(妹は藍さん)