岩田は先週の「カシオワールドオープン」で今季2勝目を挙げ、賞金12位から4位に急浮上。最後のチャンスに飛び込んできた。
ベテランの谷口徹から即「キングになれ」とのメッセージが届いたが、シード権を無くした谷口が、来季の行使を迷っている1年シードの「生涯獲得賞金25位内」の資格について、「使ってくださいね」と、返信したら「無視ですね。いつも無視されて終わります」。既読スルーに苦笑していた。
5年連続9回目の出場を果たす今大会は2位2回(20、22年)と初出場時に3位(07年)と18、21年に5位、8位。
はなから闘志を剥きだす性格ではないが、大会初制覇で、43歳305日で初賞金王なら2012年の藤田寛之(ふじた・ひろゆき)の43歳169日を抜き史上最年長となる。
「尊敬する一人。藤田さんも40代に入ってからいっぱい勝っていますから」と、少し触手が動いた。
木下は、先週の「カシオワールドオープン」2日目に、股関節痛のため途中棄権。大事を取ったが「初めての棄権だったので。悔しかった」と、不在の週末に岩田寛(いわた・ひろし)が優勝。賞金ランキングも抜かれて5位に後退した。
精密検査で股関節唇損傷と出た。
「踏み込んでねじり上げるときにまだ痛みが出る。アイシングも届かない」。
かばいながらの決戦だが、「痛いとか言っていられない。もう優勝しかないので」と決死の覚悟で挑む。
石川は先週の「カシオワールドオープン」で3打差4位に終わり涙をこぼした。
賞金ランキングも前々週から一歩後退の6位でこの今季最終戦を迎えた。
「大会が始まるんだという気持ちと、今年も終わるんだな、という気持ち。両方来ている」と、微笑んだ。
「先週はすごい落ち込んでショック、というよりは自分自身への悔しさがあったので。勝った負けたというよりは自分の中の戦い。今週は、いろんな選手のストーリーがありますけど、自分は先週の最終日の反省を生かしたい」と、静かに意気込む。
石川が逆転賞金王に就くには、優勝かつ、平田が2位タイ以下に終わること、とほかの5人よりも条件が多くつく。
「僕の場合は優勝してもなれない可能性がある。今からなりたいなりたい、と言ってももう遅い。間に合ってない。自力ではないので。だからこそ変な邪念や雑念が入らずにプレーができる」と、少し距離を置く。
でも、史上最年少の18歳で賞金王を獲った2009年の記憶は残っている。
「かなり意気込んで、決めてやる、と言って初日に+5の大たたきをしたり」。
若い自分を懐かしむ。
自分も含めて6人もチャンスを残した年は、15回の大会最多出場を続ける石川にもあまり記憶はない。
「珍しいことですし、良いこと。今までは1人、2人がずば抜けていましたけど、今はクオリティの高い選手が多くなり、このレベルの中でずば抜けるのは難しい」。
今季4勝を挙げた平田でさえ、残り1戦で約288万円まで詰められた。
「この中で、気持ちをコントロールできた選手こそ最強。今年のどの大会よりも見たいな、と思う。僕も楽しみです」。
少し俯瞰して、レースを眺める。